更年期障害に悩む女性に
管理職はどう接すべきか

秋山 ほとんどの男性の管理職は、女性の健康問題について無知なことが多く、また、デリケートな問題なので、直接聞きづらいのですが、女性の更年期障害について基本的なことを教えて下さい。

大西 人間は、生まれてから2歳くらいまでは劇的に体が大きくなり、その後「イヤイヤ期」があり、小学校に入って高学年くらいから親に反抗したり、思春期では第二次性徴で体の大きな変化を経験し、大学くらいでいろいろ落ち着いて大人になる、といったように、変化率が一定ではない成長過程をたどると思います。つまり大人になる成長過程でいくつかの大きな山をいくつか迎えますよね。

 50歳プラスマイナス5くらいの年齢で女性に訪れる更年期は、思春期のちょうど逆の状態で、男性に比べて、その変化の傾斜が急なのです。思春期に起きた心身の大きな変化と同じくらいの変化が起こると考えると、男性にも想像しやすいかもしれません。思春期に増えた女性ホルモンの分泌量が50前後でがくっと落ちます。ただ、その影響は個人差がひどく大きく、女性でもわかり合えないことがあります。のぼせの症状が出る、ホットフラッシュや、逆に冷え症がひどくなる人、頭痛、肩こり、リウマチのような関節痛、いらいらするなど、症状は千差万別です。その後、60近くなるとこれらの症状は落ち着いてきます。

 ある女性の更年期障害がひどいと知らず、ただ攻撃的な人に見えることもあります。更年期だとわかれば、気にしなくてすむのですが、それがわからないと理解に苦しむ態度を取られたりして「自分は嫌われているのでは」と周囲が悩むこともあります。

 ホルモンの急激な低下による症状と考えられているので、ホルモン補充療法で、女性ホルモンを投与することでこれらの症状が楽になる人もいます。女性の場合は更年期に限らず、月経前、月経中の体調不良、つわりなども個人差が大きく、男性には理解しづらい変化だと思います。家族に月経痛がひどい人、つわりがひどい人などがいれば、男性でも想像できるのですが、女性でも平気な人もいますので同性ならば更年期障害の苦しみを理解できるとは限りません。

秋山 どう対処すれば良いのでしょう。

大西 まず、男性が聞いても「更年期でつらいんです」とは答えてくれないので、その人の周囲の女性に「Aさん、調子が悪そうで心配」などと水を向けるといいのではと思います。何か知っていれば、「体調が悪いみたいですが、病気ではないようです」と教えてもらえるかもしれません。そのときは、「更年期障害かもしれないな」とか、「つわりがひどいのかな」とか「月経前症候群、あるいは月経痛でつらいのかも」などと解釈できるでしょう。ただ、更年期は経験しなければどういう症状があるのか女性でも理解できないということもあり、更年期で悩む女性は、すでに経験した年上の女性に相談する傾向にあります。従って、更年期障害が疑われる場合には、先輩女性を通じて確かめてもらうのが一番いいでしょうね。

秋山 その意味でもマネジメントの上の層に女性は必要ですね。

大西 絶対必要です。50前後というのは、両親の介護や子どもの思春期なども重なりがちな時期なので、その意味でもとても大変なんですね。だから、「ご両親はお元気?」とか、「お子さん、いくつになったんだっけ」と聞いてみるのも一手です。だからといって更年期障害で調子が悪い、とは言ってくれませんが。当院ではこうようにさまざまな症状に困っている女性のかたにご受診いただきやすいよう女性内科を開設しました。私自身、更年期に次男の思春期が重なって、さらに介護も重なって……ということもあって、家の中が大騒動だったこともあります。大学生の長男が、横目でクールに見ていて、「更年期の母親と思春期の息子が衝突すると最悪だ」と論評するんですよ(笑)。