「男性更年期」と
感情失禁

秋山 そう考えると本当に大変ですね。でもあらかじめそう聞いていると身近な例を知らなくても、想像はできますよね。ところで、男性更年期ということも最近は言われていますが、その点で気をつけるべきことはありますか?

管理職は「部下の更年期障害」とどう向き合ったらいい?男女で異なる注意点大西由希子医師

大西 男性は女性に比べ、性ホルモンが急激には変わらないのですが、役職定年が見えてくる50前後の年齢で、奥さんが更年期に差しかかったり、子どもの思春期や受験、親の病気や逝去とその後の遺産相続などが重なり、家庭的なストレスが高まりやすいということがあります。男性の調子が悪いときに、それが外的要因によるものなのか、ホルモンバランスの変化によるものなのかがわかりにくいんです。内科的な要因がなく、体調が悪いと訴えれば、うつ病と診断されることもありますし、男性更年期というもののはっきりした診断基準がないのが現状です。

秋山 特に中高年の男性で、急に頑固になって自説に固執し始めたり、社会的地位のある人が、建前では、紳士的にふるまいつつ、「裏アカ」のSNSで、目も当てられないような攻撃的なコメントを書き連ねたりしてしまうという例が散見される気がしますが、何か関係はあるのでしょうか?

大西 これは極論で専門的な見解ではなく、私の主観的な感想ですが、認知症や脳梗塞になると「感情失禁」という症状が出ることがあります。泣き上戸になったり、怒りっぽくなったり、感情の制御が利かなくなって、その人の極端なところが出る。加齢により頑固になるというのもその一種かもしれません。

秋山 恥ずかしながら、私も感情失禁ですね。明らかにワンパターンのわかりやすい筋書きの韓国ドラマで、自分の予想通りに展開しても、ぼろぼろ涙が出てくるんです。若い時から何事も分析的、客観的に見なければと屁理屈ばかりこねてきた結果、抑圧されていた感情が、今、加齢によって解き放たれているのかもしれません(笑)。

大西 怒鳴り散らしたり、SNSで暴言を吐いたりするより、ドラマで泣くのは平和でいいじゃないですか(笑)

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<プロフィール>
大西由希子
朝日生命成人病研究所 診療部長・糖尿病内科部長 兼 治験部長
東京大学医学部卒 医学博士
1994年東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、同分院、日立製作所日立総合病院で内科研修。2000年東京大学医学系大学院博士課程修了。同年より朝日生命成人病研究所主任研究員、2006年より治験部長。2023年より診療部長・糖尿病内科部長を兼務し、女性内科を開設。私生活では3児の母で、ママドクターの会を立ち上げ、子どものいる女性医師の支援も行っている。
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