特定商取引法のインバウンド規制はどう変わる?photo AC

個人、法人の電子商取引(EC)が拡大する一方で、景品表示法(景表法)など、関連法の厳格化も進んでいる。事業者のネット通販の広告表現が思いもよらない違反につながり、課徴金を負うケースも増えている。2023年10月1日からは、景表法に基づき、いわゆるステルスマーケティング規制など、事業者の広告表示に対する規制もさらに強化される。書籍『景表法を制する者はECビジネスを制する』では、景表法を中心に、健康増進法や特定商取引法などの関連法も含め、EC事業者が広告活動を行う際、法律上注意すべきポイントについて解説している。

対象が拡大されたインバウンド規制

 特定商取引法(特商法)の中に「電話勧誘販売」という規制があります。この規制に該当すると、電話でクロージング(注文受注)していたとしても、(1)書面でそれを確認しなければならず、かつ、(2)8日間のクーリングオフ(無条件契約解除)も認めなければなりません。

 これに該当するのは、原則アウトバウンド(こちらから電話をかける)で、インバウンド(電話を受ける)は、おとり広告のような広告で電話をかけさせた場合に限られていましたが、2023年6月より対象が拡大されることになりました。

 特商法が規制する「電話勧誘販売」に該当すると、電話でクロージングしても売買成立とはならず、その後、書面での確認を得て、契約成立となります。そのため、書面による確認が必要となり、かつ、商品受領後8日間のクーリングオフを認めなければいけません。このように、二重の規制があるので、「電話口で巧みにクロージング」ということは意味がなくなります。

 アウトバウンドは、この「電話勧誘販売」にすべて該当しますが、インバウンドは例外的に該当します。インバウンドの場合は、消費者はじっくり考えてから注文の電話ができるので、「電話口で巧みにクロージング」ということがありえないからです。

 今回の対象拡大で、この「インバウンドの例外」が変わることになります。

 これまでは、たとえば「メガネ、今なら安く買えるよ。今すぐお電話を!」とあおってコールさせ、電話が来たら電話口で「ブルーベリーサプリ」をクロージングする、というケースのみが対象でした。つまり、広告しているメガネがおとりの場合です。

 しかし、この規制だと、実際にメガネも売っているという場合は対象外となります。そこで、このようなケースにおいて、見せ玉を実際に売っているか否かに関係なく、これからは、コールを誘う広告に書いていなかったサプリメントの勧誘をしている、ということだけで規制の対象となるのです。

どのような対策が有効なのか?

 消費者に電話をかけてもらい、クロスセル(別の商品の提案)やアップセル(より単価の高い商品の提案)をしようと考えている場合は、電話をかけさせようとする広告(インフォマーシャル、新聞、チラシ、LPなど)に、そのことを示さなければなりません(インフォマーシャルの場合は、トークだけでなく文字でも示す。トークなしで文字ありはOK)。

 問題はその程度です。クロスセルの場合から考えてみましょう。

 メガネを前面に押し出し、電話を受けたらブルーベリーサプリも勧める、という例の事前告知の仕方です。

(1)電話番号の下に、「お客さまの状態に合わせ、サプリメントもご提案いたします」

(2)電話番号の下に、「お客さまの状態に合わせ、さまざまな商品をご提案いたします」

 残念ながら、これでは不十分です。関連商品を並行して売る営業手法・クロスセルに関しては、前面に押し出している商品以外のどういう商品が電話口で勧められるか、ということがわかるようになっている必要があります。

 次に、今よりも高額な商品などに乗り換えてもらう営業手法・アップセルの事例を見ていきましょう。

 サプリメントに関し、「今なら1000円。今すぐお電話を」と押し出し、電話口で定期コースを勧める、という例での事前告知の仕方です。

(1)電話番号の下に、「お客さまの状態に合わせ、定期コースもご提案いたします」

(2)電話番号の下に、「お客さまの状態に合わせ、さまざまなコースをご提案いたします」

 残念ながら、これでは不十分です。アップセルに関しては、前面に押し出している売り方以外の、どのような売り方が電話口で勧められるのか、ということがわかるようになっている必要があるのです。

特定商取引法のインバウンド規制はどう変わる?