個人、法人の電子商取引(EC)が拡大する一方で、景品表示法(景表法)など、関連法の厳格化も進んでいる。事業者のネット通販の広告表現が思いもよらない違反につながり、課徴金を負うケースも増えている。2023年10月1日からは、景表法に基づき、いわゆるステルスマーケティング規制など、事業者の広告表示に対する規制もさらに強化される。書籍『景表法を制する者はECビジネスを制する』では、景表法を中心に、健康増進法や特定商取引法などの関連法も含め、EC事業者が広告活動を行う際、法律上注意すべきポイントについて解説している。
厳格化するアフィリエイト規制
集客がうまい人に依頼し、その人のサイトのバナーからこちらの公式サイトへ送客してもらい、そこで申し込みなどが行われたら報酬を支払う。これがアフィリエイトの仕組みです。この「集客がうまい人」のことを、アフィリエイターと呼びます。私の知り合いの20代のアフィリエイターは、毎月4000万円超えのアフィリエイト報酬を得ていました。ただ、次第に規制が厳しくなってきています。
アフィリエイトサイトが虚偽誇大であっても、アフィリエイターは景品表示法(景表法)の責任を負わず、広告主が責任を負うことになっています。
アフィリエイターにアフィリエイトサイトの内容を任せていても、そこに虚偽誇大広告があれば広告主が景表法の責任を負うことになります。つまりアフィリエイターは景表法対象外。なお健康増進法は適用されますが、措置命令や課徴金の制度がなく、実効性がありません。
消費者庁は、2022年12月5日に次のような概要の通知を行っています。
「近年、インターネットを用いた広告手法の一つであるアフィリエイトプログラムを用いて、アフィリエイターが、アフィリエイトサイトにおいて、広告主の販売する健康食品について虚偽誇大表示等に当たる内容を掲載することがある。このようなアフィリエイトサイト上の表示についても、広告主がその表示内容の決定に関与している場合(アフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合を含む。)には、広告主は景品表示法及び健康増進法上の措置を受けるべき事業者に当たる。アフィリエイターやアフィリエイトサービスプロバイダーは、アフィリエイトプログラムの対象となる商品を自ら供給する者ではないため、景品表示法上の措置を受けるべき事業者には当たらないが、表示内容の決定に関与している場合には、「何人も」虚偽誇大表示をしてはならないと定める健康増進法上の措置を受けるべき者に該当し得る。」(「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」)
アフィリエイターが気を付けたいポイントとは
虚偽誇大のアフィリエイトサイトが原因となって、広告主が措置命令を受けた事件はこれまでに7件あります。
またインスタグラムも絡む措置命令としては、2021年11月9日の措置命令があります。この措置命令において、インスタグラマーのアカウントの景表法上の責任を販売者が負わされました。このアカウントは商品を出し、「バストアップサプリです」と紹介していましたが、まったく根拠のないものでした。
これにより、インスタグラムの場合、「#商品名」で商品アカウントが出てくる場合は、両者は一体と見られることが明らかとなりました。
当初、企業がインスタグラマーに依頼する場合、商品やサービスの認知拡大を狙って依頼する「認知拡大型」がほとんどでした。しかし最近は、SNSマーケティングを積極的に展開し、商品の購入を獲得する「購入獲得型」が増えています。
購入獲得型の特色は2つあります。
1つは、間に広告代理店やアフィリエイトサービスプロバイダーが入り、多数のインスタグラマーを動かすこと。
もう1つは、インスタグラマーには獲得に応じて報酬が支払われることです。この場合、法律的にはインスタグラマーはアフィリエイターとみなされ、アフィリエイトの規制も受けることになります。