給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。
当座資産は、特に現金にしやすい資産
流動資産の中で特に現金にしやすい資産を当座資産といいます。流動資産の中の現金・預金、受取手形・売掛金、有価証券がそれに該当します。
棚卸資産も売ろうと思えばすぐに売れる品であれば現金に近いといえますが、一般的には販売するのにある程度時間がかかったり、売れ残るリスクがあったりするので、流動資産の中では比較的現金にしづらい資産と考えられます。流動資産は主に当座資産と棚卸資産で成り立っている、といえます。
有価証券は株や債券のことです。有価証券は固定資産の項目としても出てきます。売買目的で保有している有価証券は流動資産、関連会社や取引先の株を安定株主として保有しているなど当面売ることを予定していない有価証券は固定資産に分類します。
流動資産の中の有価証券は売買目的で保有しているものですから、基本的には市場取引が簡単にできるものであり、必要な場合には簡単に現金化できるものであると考えられます。そのような理由から「現金にかなり近い資産」と考えられ、当座資産に分類されます。
その他の流動資産について
前払費用は今後受け取る予定の商品や製品の代金を前払いしたものです。「お金は支払ったけど、モノはまだ受け取っていない」という場合にこの項目を資産の中に計上します。
たとえば、100万円の機械を現金や預金で買えば、貸借対照表では現金・預金が100万円減って、その分100万円の機械が増えます。
しかし、機械がまだ引き渡されていない場合には、現金・預金を100万円減らした代わりに前払い金という項目を100万円増やします。機械が引き渡されれば、前払い金が100万円減って、機械という項目が100万円増えることになります。100万円を支払ったことで、今後100万円相当の品やサービスを受ける権利を得たと考えて、この項目を載せているわけです。
貸付金も資産としてカウントされます。返済の確実性が高いのであれば、それは預金と同じような性質のものだからです。1年以内に返済される予定の貸付金は流動資産になり、返済予定が1年よりも長いものについては長期貸付金として固定資産に区分されます。
繰延税金資産というのは、将来の所得に対する課税額を減らす効果があると考えられる分の金額です。
下図にあるように、たとえば、純利益が100億円の赤字になれば、翌年以降にその100億円を繰り越して(これを繰越欠損金という)、課税対象となる利益から差し引いて、その分税金を減らすことができます。
もし次の年に300億円の純利益が出たら、そこから繰り延べた赤字の100億円を差し引いて、200億円が課税対象になります。税率が3割だとすると、課税対象が100億円減った分、税金は30億円減らすことができます。この30億円分税金を減らす効果の金額は、この効果が行使されるまで繰延税金資産として計上することになります。
このように、繰延税金資産というのは実際に使える資産があるわけではなく、将来的に会社が利益を出さなければ効果が得られることもありませんので、現金・預金や有価証券に比べると実態性が薄く、資産性という点では質の低い資産ということになります。
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/