バリューアクトの主張
「総合スーパーや百貨店事業は売却すべきだ」

 バリューアクトが要求しているのは、基本的に「株主価値の最大化」だ。つまり、企業が成長し株価を上昇させたり、配当金を増やしたりすることを求めている。その根底には、先述した「企業の所有者は株主」という基本認識がある。

 すなわち株主が、経営の専門家(いわゆるプロ経営者も含む)に事業戦略の立案や実行などを委任し、経営者はその期待に応えるべきだとの方針だ。それが企業の成長を支え、幅広い利害関係者にもプラスの価値をもたらすと考えている。

 その考えに基づくと、セブン&アイ経営陣の戦略には修正すべき点があると見えるのだろう。例えば、同社の小売事業は、百貨店、総合スーパー、コンビニエンスストアと、業態や顧客層が異なる領域に広がっている。現状、総合スーパーのイトーヨーカ堂や百貨店のそごう・西武への成長期待は高まりづらい。

 一方、コンビニ事業の収益性は相対的に高い。セブン-イレブン・ジャパンは消費者のニーズをとらえた迅速な商品開発において定評があり、協力会社とも連携しながら商品供給を強化してきた。

 近年では、米国でスピードウェイ事業(コンビニエンスストア併設型のガソリンスタンドビジネス)を買収したのが大きなインパクトだった。国内のコンビニ事業で磨いた商品開発や、物流のノウハウを海外市場に持ち込み、東アジアなど新興国での出店数を増やしてもいる。海外コンビニ事業は、国内コンビニを上回る収益を獲得するまでに成長した。

 バリューアクトはその点に注目し、セブン&アイ経営陣にコンビニ事業に集中的に経営資源(ヒト、モノ、カネ)を投じるべきだと提案した。その原資を捻出するために、収益性が低い総合スーパーや百貨店事業は迅速に売却すべきだ、とも。それが株主にとっての価値向上に欠かせないのだと主張する。