海の深さはどれくらいか?
グアムの北に位置するアメリカ領マリアナ諸島の約200キロメートル東に、人類が知る限り最も深い場所があります。その名は「マリアナ海溝」。西太平洋の海底に広がる長さ約2550キロメートル、平均幅は約70キロメートルの細長い三日月形の海溝です。
マリアナ海溝は、沈み込み帯と呼ばれる厚さ100キロほどの巨大な岩盤「地殻プレート」2つが出合い、片方がもう一方の下へ沈み込む場所。太平洋プレートがフィリピン海プレートの下へ沈んでいることが、1960年代後半以降に発展した地球科学の学説である「プレートテクトニクス」理論で説明されています。そして、この海溝の半分を占める太平洋プレートは約1億8000万年前の太古の海底で形成されたとされ、非常に長い時間をかけて少しずつ下に沈み込んできたということです。
これがマリアナ海溝の深さの(現段階での)理由となっていますが、他にも2つの要因があるとされています。1つ目はマリアナ海溝が陸から遠い場所にあり、土砂を運んでくる河川から離れているため土砂が堆積しないこと。2つ目は、断層が海溝の近くで太平洋プレートを細い溝状に切断しているため、他の沈み込み帯よりも急な角度で沈み込みやすくなっているということ。
そんなマリアナ海溝の南端には、チャレンジャー海淵と呼ばれる狭くて小さな谷があります。まさに文字通り、溝にできた淵なのです。そしてその名は、1951年に初めてその深さを記録した探検隊にちなんで名づけられました。そこで記録された水深は、なんと約1万1000メートル。標高8848メートルを誇るエベレストをこの海淵の底に合わせて並べたとしても、その頂上のはるか約2000メートル以上先までいかなければ海面に達することはできないのです。