約30年前から州政府と
闘ってきたディズニー
米国には数十年前から強い信念と覚悟を持ってLGBTコミュニティーを支援してきた企業があるが、代表的なのはディズニーである。
ディズニーは現在、フロリダ州の学校で生徒たちに性的指向や性自認について教えることを禁止する「教育における親の権利法」を巡ってデサンティス知事と法廷闘争中だが、実は同社は約30年前からこの問題で州政府と闘ってきた。
ディズニーは1995年、同性愛カップルに夫婦並みの権利を与える「ドメスティック・パートナー特典(DPB)」政策を導入したが、フロリダ州議会の共和党議員15人が「それは不健康で、不自然で、反家族的だ」と批判し、その撤回を求めた。しかし、同社は「我々は“黒人禁止、ユダヤ人禁止、同性愛者禁止”の看板を掲げてはいない。誰も排除しない」として、引き下がらなかったという。
同社の強い信念と断固とした姿勢は他の企業や一般米国人のLGBTに対する意識や姿勢にも影響を与えたようだ。
ラトガース大学法学部のカルロス・ボール教授は、「米国の大企業はなぜ、そしてどのようにLGBTの権利を擁護してきたのか」について論じた著書『The Queering of Corporate America(米国企業のクィアリング)』の中で、「米国企業のLGBTの権利を擁護する活動は、米国社会が同性愛者やその他の性的少数者をどう見るか(偏見、差別を減らすことを含め)において大きな役割を果たしてきた」と述べている。
この十数年の間に米国社会のLGBTに対する偏見が著しく減少したことは、調査データでも示されている。
2007年から2016年の間に行われた400万件以上の人々の意識や態度に関する調査結果を分析したハーバード大学の研究では、「この間に同性愛者に対するバイアス(偏見)が33%減少した」ことがわかったという。また、ギャラップが同性婚に関する調査を開始した1996年には支持する人の割合はわずか24%だったが、それが2011年に初めて過半数に達した。
このような世論の変化も踏まえて、連邦最高裁判所は2015年に、全米50州で同性同士の結婚を合法とする判決を下したのである。