日経平均がバブル後最高値を更新した。だが、「将来のお金の問題が不安だ」「投資が大切だと漠然とわかっているが、なかなか行動に踏み切れない」「貯金や投資を始めてはみたものの、自分の方法が正しいかどうか確信が持てない」──そんな悩みを抱えていないだろうか? そんな人に朗報がある。
全世界350万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルが「ニックのように、データの真の意味を理解できるデータサイエンティストでありながら、説得力のあるストーリーを語れる人はまずいない。絶対読むべき一冊だ」。全世界1000万部突破『Atomic Habits』著者ジェームズ・クリアーが「お金に関する価値ある知恵と実践的なアドバイスが満載」と強力ダブル推薦する注目書がついに日本上陸。
全米ベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』だ。
全米屈指のデータサイエンティストによる、お金を貯め、富を築くための証明済の方法を初公開。本稿では、本書から一部を抜粋・編集しながら億万長者でも自分は金持ちだと実感できない理由について見ていこう。

なぜ、トップ0.01%の億万長者でも「自分は金持ちだ」と実感できないのか?Photo: Adobe Stock

億万長者は
「自分を金持ち」と実感しているのか?

「億万長者になったら、自分は金持ちだと実感できるはずだ」と考えている人は多いかもしれない。

 だが、現実には必ずしもそうではない。

 たとえば、ゴールドマン・サックス元CEOで億万長者のロイド・ブランクファインは、2020年2月のインタビューで、莫大な資産を持っているにもかかわらず、「自分は金持ちではない」と語っている。

「ブランクファインは、“自分は金持ちではなく、暮らし向きがいいだけだ”と言う。“金持ちとはいえない”と彼は主張する。“自分が金持ちだという気がしないんだ。そんなふうに行動もしていないし”」

「ニューヨークだけでなくマイアミにもマンションを持っているというが、富裕層が陥りそうな罠にはハマっていない。“もしフェラーリを買ったら、こすってしまわないかと気になって落ち着かないだろう”と冗談を言う」

 意外な発言に驚くかもしれないが、私にはブランクファインがなぜそう考えるかわかる。

 ジェフ・ベゾスやデヴィッド・ゲフィン(米国のレコード会社経営者、映画プロデューサー)のような大富豪と接する機会が多く、レイ・ダリオやケネス・グリフィンといった金融界の大物と同じ世界に生きていると、10億ドルは大した資産に思えないはずだ。

トップ0.01%の金持ち

 だが客観的に見れば、ブランクファインは米国のトップ0.01%の金持ち、つまりトップ1%の中のさらにトップ1%の金持ちである。

 経済学者のサエズとズックマンによれば、2012年の米国のトップ0.01%の世帯(米国全体で1万6000世帯以下)は、1億1100万ドル以上の純資産を保有していた。

 それ以降の資産価格の上昇分を調整しても、ブランクファインは優にトップ0.01%に入るだろう。

 だが、このように「実際は裕福なのにそうだとは思えないという問題」を抱えているのはブランクファインだけではない。

 所得層の上位に位置する人の大半は、実際より自分は金持ちではないと考えている。

データが示す意外な真実

 たとえば、『ザ・レビュー・オブ・エコノミクス・アンド・スタティスティックス』誌に掲載された研究によると、所得が全体の上位半分の世帯のほとんどは、自分が全体の中でどれくらい裕福かを認識していない。

 以下に、同誌に掲載された図表58を紹介する。

なぜ、トップ0.01%の億万長者でも「自分は金持ちだ」と実感できないのか?図表58 所得分布における相対所得の実際および認識

 この図からわかるように、実際の所得が上位10%の世帯(図表58の横軸の90~100に該当する部分)でも、「自分は全体の60~80位程度だ」という自己認識を持っている。

 この結果は一見すると驚くべきものに思えるかもしれないが、豊かさの認識をネットワークの問題と考えれば理解しやすい。

 マシュー・O・ジャクソンは著書『ヒューマン・ネットワーク――人づきあいの経済学』(依田光江訳、早川書房)の中で、なぜほとんどの人が自分は友人より人気がないと感じているのかという問題を取り上げ、この概念をうまく説明している。

「他人のほうが自分より友人が多いと思ったことはないだろうか? もしあるなら、それはあなた一人ではない。実際、私たちの友人は、平均的な人より友人が多い。これは友情のパラドックスだ。(中略)これは簡単に理解できる。友人の多い人は、多くの人の友人リストに含まれている。友人が少ない人は、少数の人の友人リストにしか含まれていない。つまり友人が多い人は人口比以上に、私たちの友人リストに入りやすく、友人が少ない人は人口比以上に、私たちの友人リストに含まれにくい」

 この図は、1回目の回答者の認識および実際の相対所得の関係を表したものである。

 同サイズの100個の点で、実際の相対所得と回答者が認識している相対所得を表している。

 45度の斜線は、バイアスのない位置を示している。サンプル数は1242件である。

(本稿は『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』の一部を抜粋・編集したものです)