メンバー同士のトラブル解決が
「少人数の方が難しい」理由

 本書ではこの他にも「期末まで2カ月を切った段階で、上から到底達成不可能な売上目標が上乗せされる」といった修羅場を紹介している。

 木村氏はその対応策として、部門の判断で外部と組む、事業ごと買収してくれるスポンサーを見つけてくる、といった大胆な解決策を提案している。個人の実績を伸ばすことを模索するのではなく、「事業」の将来を優先して考えるということだ。

 他にも本書では、ミドルリーダーは「目先の利益」に左右されるのではなく、「事業の長期的・継続的な成長」を判断軸に据えるべきだと繰り返し述べられている。また、意思決定の根底に「自分が仕事において一番大事にしているものは何か」という「軸」を持ち、それを前提にした判断や行動をするよう勧めている。

「目先の利益を追わない」というのは、社内の出世争いや人間関係にも当てはまる。例えば、「専務派」と「部長派」のどちらにつくか、といった派閥争いに巻き込まれそうになるのはよくある話だ。

 この場合に、「専務にはお世話になっている」とか「部長についた方が出世が望める」といった理由で判断するのはご法度だという。そんなことでは、事業の成長とは関係のない、無益な争いが助長されるだけだからだ。

 ただし中間管理職が難しいのは、いくら自身がトラブルに巻き込まれないよう気を付けていても、「部下同士の人間関係」がこじれるリスクがあることだ。

 本書では、そうしたもめ事の解決について「少人数の方が難しい」と指摘している。特に3人くらいのチームが一番厄介なのだという。少人数の方が対立は先鋭化しやすく、間に入る人がいないことが多いからだ。

 また、少人数の集団は人間関係が濃密になりやすい。会議などで、気が合わないメンバーと頻繁に話す機会があれば、逃げ場がなく職場に居づらくなる。人数がいれば、味方になってくれたり、愚痴を言えたりする人もいるだろうが、数人しかいなければそれも望めない。

 こうしたトラブルが話し合いで解決しない場合、中間管理職はもめているうちの一人を自部門に残し、もう一人を他部門に異動させるなど、人材配置の再考を求められることがある。

 本書の内容に沿うならば、リーダーにはその際も「事業の長期的・持続的な成長」に貢献できる人材を優先して残すという合理的判断が求められるのだろう。