ベンチャー企業は本当に
大企業よりもラクなのか?

 そして、それは経営不振などによって「部下をリストラしなくてはならない」といった修羅場を迎えたときも同じだ。そんな場面でも中間管理職は冷静さを保ち、「合理」を前面に出して思考しなければならないと本書は説いている。

 だがもちろん、これまで築いてきた人間関係や信頼関係にひびを入れかねない時には、ケース・バイ・ケースで「情理」も必要なのだという。リストラのケースでは、整理対象になった部下を冷徹に切り捨てるのではなく「誠意を尽くして説明する」ことも、中間管理職に求められる能力の一つだと説明している。

 このように、本書ではさまざまな修羅場とその解決策がセットで紹介されている。その中でも、筆者はやはり「少人数の組織は修羅場が生まれやすい」という話が特に興味深かった。

 大企業に勤めている読者の中には、「しがらみの多い会社の人間関係から抜け出し、少人数のベンチャーでのびのび働きたい」という希望を持っている人がいるかもしれない。だが、必ずしもベンチャーが働きやすいわけではなく、少人数には少人数なりの苦労があることを覚悟しておいた方がいいだろう。

 そういえば『どうする家康』で家臣同士が対立する場面も、たいてい少人数だ。本書とドラマで、新旧の修羅場とその解決策を比べてみるのも面白いかもしれない。

(情報工場チーフ・エディター 吉川清史)

情報工場
ダメな上司は「ダークサイド・スキル」で刺せ!修羅場で使える“だまし討ち”のテクニック【書評】
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