不倫相手とうわさされる傅暁田記者とは何者なのか
米国で豪邸に住み、父親を明らかにせず出産
ここで名前が挙がった傅暁田記者は、1983年生まれの40歳。中国出身で英ケンブリッジ大学に留学した才媛だという。香港フェニックステレビは香港を拠点とした放送局だが、中国国内視聴者に向けた番組制作を続けているテレビ局である。米国が襲撃された2001年の9.11の際に中国全土で唯一24時間生中継したことで大きく注目されて花形メディアとなり、2000年代には中国の大学生の希望就職先ランキング1位にもなった。
だが、中国政府によるメディア規制が進み、中国系資本による同テレビ経営への介入が急速化。さらにここ数年の香港情勢の変化により、2年前に中国政府直轄の駐香港文化出版企業に全面買収されて、完全に中国国有企業支配下に入った。
その一方、同テレビ局はここ10年あまり、「中国政府にコネを持つ人しか採用されない」ともいわれてきた。ニュースをすっぱ抜くための手段として「縁故」雇用を重視してきたのだ。当時の現役外相の姪がキャスターを務めていた例は有名だし、同局の内部事情に詳しい人から聞いた話でも、さまざまな長官の息子や娘、甥や姪が雲集していたのは間違いない。
その頃雇用された傅記者も、30代そこらで母校のケンブリッジ大学に多額の寄付をしたことで大学内に彼女の名前が冠されたガーデンがあるという「武勇伝」を持っており、その来歴には想像力をそそられる。
ネットでしきりに言われているのは、米国駐在記者だった彼女が当時駐米大使だった秦剛をインタビューした際、妙に馴れ馴れしかったとか、自分が米国で暮らす、記者としては身分不相応なほどの豪邸をSNSで披露していたこと、さらに極め付きは昨年11月に未婚のまま、また父親を明らかにせずに出産したことを公開したことだった。これらの情報から「彼女が生んだのは秦の子ども」というストーリーができ上がり、まことしやかに流れている。
さらには、彼女がスパイ、それも二重スパイといううわさも流れているが、スパイ説の具体的根拠はどこにも示されていない。まぁ、中国では一般的に「記者はスパイである」という古臭い文言が信じられており、筆者ですら「スパイではないのか」と尋ねられたことがある(スパイに「スパイか?」と尋ねても「はい」と答えるわけがないと思うが……)呑気さなので、言葉通りに受け取る必要はないと思う。
ただ、こうしたゴシップばかりではなく、裏に存在する主導権争いを指摘する声もある。「戦狼外交」を続けて優位に立たせたいとする王毅氏(彼は「戦狼外交」の父祖と呼ばれている)と、米国懐柔策を説く秦氏との間で、外交政策に対する意見が対立したのではないかという指摘だ。だが、今のところこちらも、政権内で外交主導権争いが起きていることを裏付ける確固たる情報もない状態だ。
さらには、秦剛の後任である謝鋒・駐米大使が、米国の公式の場で彼の不在について問われ、「このまま様子を見ていましょう」と言って笑った、という不気味な情報も流れていた。