サウナの入り方に戸惑う初心者から、サウナ慣れしてととのいにくくなってきた熟練サウナーまで! それぞれに合わせた「究極にととのう」ための入り方を、自らもサウナーの医師が解説した書籍「医者が教える 究極にととのう サウナ大全」が発売に!日常のパフォーマンスをあげ、美と健康をレベルアップする「最高のサウナの入り方」を、世界各国のエビデンスを元に教えます。この連載では本書より、一部を抜粋してご紹介します。
サウナが運動に役立つかは、組み合わせで決まる
サウナが運動に与える影響は、医学界でも「役に立つ」「役に立たない」と賛否が分かれています。なぜ意見が真っ二つになるのか。その原因と、サウナを運動に役立てる方法を見ていきましょう。
「サウナ」×「運動」と言っても、サウナに入る前に運動をするのか、それとも入った後にするのか。また、その運動は高負荷運動なのか、それとも低負荷運動なのかなど、組み合わせは複数あります。
私はこれこそが、「サウナは運動に役立つか論争」を巻き起こしている根本的原因だと思います。
ある人は、サウナに入った後に高負荷運動をすることを指して、「体に負担がかかりすぎる。だからダメ」と言う。また、ある人は、違うパターンを指して逆の主張をする。これでは、議論がかみ合わないのは当然です。
そこで、この項ではなるべくフラットな視点で、状況を整理していきたいと思います。
まず押さえておきたいのが、サウナに入るタイミングについてです。運動前に入るのか、それとも運動後に入るのか。それぞれの役割を踏まえて考えてみましょう。
運動前に関しては、ウォームアップが目的です。体を温めて動きやすくすることで怪我をしにくくしたり、運動の序盤のパフォーマンス向上に役立つことが報告されています。
これに対して、運動後に入る場合は、疲労回復やリカバリーといったメンテナンスが目的になります。
このように、そもそも役割が異なるので、目的別に最適な入り方をしましょうというのが基本的なメッセージです。
「サウナ後の運動」は、その運動が高負荷か低負荷によって評価が変わる
サウナ後に運動する場合は、その運動が高負荷なのか低負荷なのかによって良し悪しが変わります。
低負荷運動というのは、軽いジョギング、ヨガ、ストレッチ、軽い筋トレなどです。
高負荷運動というのは、本格的な筋トレ、短距離走、ジャンプなどを含む瞬発的な運動などです。
サウナ後は「低負荷筋トレ」がおすすめ。「高負荷筋トレ」はNG
運動の負荷を表す単位として「1RM(one-repetition maximum)」というものがあります。人によって違うのですが、1回だけギリギリできる最大の負荷の運動を「1RM」と言います。効果的に筋トレをするためには、60~80% 1RM程度の強度で行うのがよいとされています(ただし近年は、整形外科的外傷や高血圧につながるという報告があるので注意が必要です)。
しかし、高負荷運動の前にサウナに入ってしまうと、筋力を増強するために運動しても増強しづらくなるという欠点があります。
また、なるべく長い間、高負荷の運動をしたほうが筋トレの効果は上がりますが、持久力も下がってしまい、全然もたなくなるということが報告されています。
さらに、高負荷で筋トレをすると血圧が上がりますが、サウナでも血圧が上がるので、血圧が上がりすぎてしまってよくないという側面もあります。
一方、ある論文によると、低負荷運動(30%1RMの強度で長時間、8回繰り返し×3セット)の前にサウナに入るのは非常によいとされています。
軽い運動の前にサウナに入ると、筋肥大が増えます。
また、遅発性筋肉痛(運動後数時間~翌日・翌々日など時間を置いて起こる筋肉痛)が和らぐということも報告されています。さらに、血圧を下げる効果も報告されています。
サウナで筋トレ効果を高めたいなら、「サウナ後に軽い筋トレ」が正解です。
*本記事は、「医者が教える 究極にととのうサウナ大全」から抜粋・編集したものです。