中国のBL(ボーイズラブ)を特集した文芸誌「すばる」が、予想外の売れ行きに初の重版を決めた。それを後押ししたのはBLファンに違いなく、彼らの影響力に注目した企業もいるだろう。そこで、商業BLのマーケティングやコンサルティングなどを行う株式会社サンディアスの平野あんり氏(マーケティング担当)と、筒井なぎさ氏(同社が運営する商業BLレビューサイト「ちるちる」編集部員)にBL市場の現状を聞いた。(清談社 沼澤典史)
「すばる」重版の理由
BLビジネスを検討する企業も増加
先日、文芸誌「すばる」(集英社)の6月号が、1979年の月刊化以降、初めての重版となった。初版5000部の発売後、2日後には1万部の増刷となったという。さらに、1カ月以内で3刷重版も決定するなど異例の売れ行きを記録した。
その要因となったのは中国BLの特集である。特に、世界的な人気作であるファンタジーBL小説『魔道祖師』の作者・墨香銅臭氏を迎えた鼎談は注目を集めた。
「中国のBL作品は『中華BL』と呼ばれますが、その火付け役であり、圧倒的人気を誇るのが『魔道祖師』です。特に『魔道祖師』の実写ドラマ化作品の『陳情令』は世界的にヒットし、再生回数は100億回を超えています。それに付随して、原作小説やアニメも人気になりました。国内にもファンは多数います」(平野氏)
また、今回の中華BL特集をプロデュースしたのは小説家の綿矢りさ氏。この点もファンの話題を集めたと筒井氏は言う。
「BL作品を書かれていない綿矢りさ先生が、墨香銅臭先生の作品を好きだと公言されたこと、そして中華BL特集をプロデュースしたこともファンにとっては話題性がありました。芥川賞作家である綿矢先生が、鼎談の聞き手を務める貴重性も購買を後押しした要因でしょう」
近年はBLファンをターゲットにBL関連のビジネスを検討する企業が増えているそうだ。BLレビューサイト「ちるちる」の他、年間のBL作品を部門ごとにランキング化する「BL アワード」の主催、BLコンテンツについてのウェビナーなどを行っているサンディアスには、実際多くの相談が寄せられている。
「BLレーベルを立ち上げたい出版社さんや実写作品を作りたい制作会社さんなどからの相談が、3~4年前から増えています。ただ、BLへの理解不足によって良くない結果に終わる事例も多くあるので、ビジネスにおいてはジャンルやファンへの十分な理解が必要不可欠なんです」(平野氏)