ルーブルの下落に歯止めがかからない

 7月21日のロシア中央銀行の金融政策決定会合では当初、7.50%から8.00%への0.50ポイントの利上げが予想された。しかし、実際には、予想を上回る1.00ポイントの利上げを発表し、政策金利を8.50%に引き上げた。

 年初から7月21日までの間、ルーブルは対ドルで約23%下落した。ルーブルの下落ペースは、ロシア中銀の予想を上回ったようだ。

 ロシアがウクライナに侵攻する以前、ルーブルは1ドル=75ルーブルを挟む横ばい圏だった。22年2月24日に戦闘が発生すると為替レートは急落した。米欧を巻き込む戦争の勃発で、リスク削減に動く投資家は急増した。22年3月上旬、1ドル=140ルーブル台まで、急激にルーブル安が進行した。なお、ルーブルの流動性が低いため、為替レートはデータ提供元によってばらつきがある。

 ロシア国内では、海外企業の撤退などによって食料品や日用品、自動車などの不足が鮮明となった。輸入物価の上昇とモノなどの不足によって、ウクライナ紛争の発生直後、ロシアのインフレは急伸した。一時、消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比10%を上回った。

 その後、一時的に、ルーブルの為替レートは持ち直す。中国やインドなどがロシアから原油(ウラル産原油)を輸入し、制裁を回避する抜け道になったからだ。予想されたほどロシア経済は悪化していないとの見方は増え、ルーブルは米ドルに対して「じり高」に。輸入物価の上昇圧力は徐々に弱まり、23年4月のCPI上昇率は、同2%台まで低下した。

 しかし、4月ごろからルーブルの下落は再び勢いづいた。ルーブル安に歩調を合わせるようにして、CPIの上昇ペースも強まった。