中小企業では見落とされがちな株主管理。設立時の出資者や相続による株主変更など、気がつかないところで株式が分散していることが多い。平時は何事もないようでも、分散株式があることで安定した経営ができないばかりか、経営権を失う事態も生じうる。『社長のための分散株式の集約で経営権を確保する方法』を上梓した喜多洲山氏に、分散株式による経営リスクの問題点を聞く。
経営権のリスクは
どの会社にも存在している
事業に邁進しているオーナー経営者の実感として、自分自身に今、経営権のリスクがあるとは思えない方もいるでしょう。
もっともわかりやすい例は、オーナー経営者自身が100%の株式を保有しているケースです。
さすがにこれなら、経営権は盤石でリスクなど何もないし、あとはうまく経営していけばいいのではないかとお考えでしょう。それはそのとおりです。
では、あなたが亡くなったとしたら、その株はどうなるでしょうか?
それでも、相続人が配偶者だけ、あるいは配偶者がすでにおらず子どもが1人しかいないなどのケースであれば、原則として1人が全てを相続しますので少数株主は生まれません。
しかし、優良企業であればあるほど、あなたの会社の株式は相続財産としてそれなりの評価を受けます。果たして、残された人は急に多額の相続税を払えるでしょうか。そのために預貯金、土地家屋など他の資産を手放さなければならなくなるかもしれません。
そして、突然あなたから引き継いだ企業を、あなたの代わりにオーナー経営者となって切り盛りしていけるでしょうか。そうではないなら、信頼して任せられる他の役員や従業員はいるのでしょうか。
配偶者と子がいる場合は、この時点で100%保有という状況ではなくなります。法定相続であれば配偶者は半数を確保できますが、「過半数」ではありません。この状況で、家族間でもめ事が始まったとしたらどうなるでしょうか。
少し想像しただけでも、このとおりなのです。オーナー経営者であるあなたが1人の人間である以上、必ず引退、あるいは亡くなる時が来ます。つまり、株は必ず分散していくわけです。