定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる! マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されます。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

「退職金」は定年間際からでも「手取り」を増やせる!Photo: Adobe Stock

いかに税金を低く抑えるかが、手取りアップのコツ

 退職金は、多くのサラリーマンにとって、一度にもらえるお金としては人生最大の収入といっても過言ではないでしょう。
「定年間際で、退職金を今さら増やすなんて無理でしょ」と思うかもしれませんが、退職金の手取りはちょっとした工夫で、数十万~数百万円単位で変えることができます。
 退職金の手取りを増やすコツは「税金を低く抑えること」。ポイントは、「もらい方」と「非課税枠のフル活用」です。

退職金は税金が超優遇されている! 社会保険料もかからない

 退職金を一括で受け取った場合には、「退職所得控除」という大きな非課税枠が用意されています。この非課税枠は勤続年数が長いほど多くなります。仮に勤続35年の場合の非課税枠は1850万円。ここまでは退職金をもらっても税金はかかりません。また、非課税枠を超えたとしても、超過分の半分だけが課税対象。社会保険料もかかりません。ちなみに1850万円を給料でもらったら、400万円程度の税金と220万円程度の社会保険料が取られてしまいます。

 つまり退職金の手取りを増やすためにはこの「退職所得控除」を最大限活用するのがポイントです。本書では、その方法をいくつか提案していますが、分かりやすい例をひとつご紹介しましょう。

退職日が1日違うだけで手取りが20万円も変わる?

 たとえば、退職日が1日違うだけで、退職金の手取りが約20万円も違うこともあります(退職所得控除以上の退職金をもらう場合)。例として、

・1986年4月1日に入社 2024年3月31日に退職(勤続38年)

 のAさんの場合で考えてみましょう。
 勤続20年超の人の退職所得控除の計算式は、40万円×20年+70万円×(勤続年数-20年)ですから、

 40万円×20年+70万円×(38年-20年)=2060万円 で2060万円まで非課税になります。

 ちなみにAさんがもし「2024年4月1日に退職」にするとどうなるでしょう? 勤続年数は端数切り上げなので、この場合勤続39年となります。

 40万円×20年+70万円×(39年-20年)=2130万円 で2130万円まで非課税になります。

 非課税枠がたった1日退職日を変えるだけで70万円もアップするのです(勤続20年超の人の場合)。退職金は非課税枠を超えた部分の半分が課税対象になるので、非課税枠が70万円増えるということは、課税対象となる金額は70万円の半分の35万円減るということになります。

 所得税の税率は5%~45%、住民税の税率は10%ですから、35万円課税対象が減るということは約5万円~約20万円ほど税金が少なくなり、手取りが増えるということです。退職日を自分で決められる人は少しずらすことで勤続年数を増やせないかチェックしてみてください。

年金形式でもらう場合にも裏ワザが

 また、退職金は一時金でもらう以外に年金形式を選択できる場合もあります。年金形式でもらう場合には、税金や社会保険料の優遇はありませんが、一括受け取りとの組み合わせ方や、もらう時期をずらすなどのちょっとした工夫で税金を抑えることも可能です。
 本書では、退職金の手取りを最大化するためのワザを紹介しています。できるものは実践して退職金を1円でも多く手に入れましょう!

*本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。