たくさん英語を勉強したのにいつまでたっても話せる実感が持てない――そんな英語学習者から「最短で英語の表現力をつけるならこれ」「会話で使える用例が半端なく多い」と絶賛の声を集める本がある。『話す力が身につく5分間英単語』だ。著者は、英字新聞The Japan Times Alpha編集長を10年以上務める高橋敏之さん。本稿では、高橋編集長もプライベートで実践する「映画を観て効果的に英単語や表現を吸収する方法」を教えてもらった。

英単語を効率よく吸収する方法「映画鑑賞後にやるべき1つのこと」Photo: Adobe Stock

日本語字幕なしの映画鑑賞は英語学習に役立つか?

「映画を使って英語を勉強できたら、楽しくて最高だろうな」

 このように考えたことがある人は多いのではないでしょうか。

 最近では映画館まで行かなくても、動画配信サービスなどで自宅でも手軽に映画鑑賞を楽しめるようになりましたね。

 映画で英語学習と聞くと、「字幕無しで視聴する」という学習法を思い浮かべる人がいるかもしれませんが、はっきり言って、よほどの上級者でもない限りお薦めしません。

 試しに、映画を1本字幕無しで観てみてください。その作品の英語難易度にもよりますが、おそらく、半分も聞き取れなかったという人が大半ではないでしょうか。

 理解度が50%未満では教材としては難しすぎるし、何より楽しくないですよね。

 残念ながら、映画を聞き取りの素材として活用するのは、多くの人にとってレベルが高すぎるのです。

映画を観て、効果的に英語の表現を吸収する方法

 では、映画を使った学習は諦めるしかないのか?

 その必要はありませんよ。字幕無しで観る以外にも、映画を使って効果的に英語力を伸ばす方法があるのです。

 それが「視聴した映画のPlot(あらすじ)をオンライン百科事典Wikipediaの英語版で読む」という学習法です。やることは単純。

・映画を視聴する
・その映画のWikipediaのページを開いて「Plot」の項目を読む

 これだけです。Plotの項目は、ほぼすべての作品のページにあります。

 もちろんPlotの内容を理解するためには、ある程度の読解力や語彙力が必要ですが、あくまでコンパクトにまとめられた「あらすじ」を読むだけなので、字幕無しで最初から最後まで視聴して理解しようとするよりは、ずっとハードルが低いでしょう。

 この学習法の効果は、何と言っても表現力が身につくということ。僕自身も毎週映画を1本視聴し、そのPlotを読むという習慣を何年も続けています。

 毎回、「あの場面は、こんな英語で表現できるのか」という新しい発見がありますよ。

 内容を頭に入れた上で、Plotを読むだけなので、日本語字幕で視聴していただいて結構です。

 さらに言えば、洋画である必要もありません(有名な邦画であれば、Wikipediaに英語のページがありますから)。

 ここでは、おそらく読者の皆さんが一度は観たことがあると思われる『となりのトトロ(英語タイトル:My Neighbor Totoro)』を例にとってご説明しましょう。

 クライマックスでは、以下の場面が出てくるのをご存じでしょうか。

・妹のメイが行方不明になり、サツキがトトロに必死に助けを請う
・トトロはネコバスを呼び出す
・ネコバスがサツキをメイのもとへと運び、姉妹は再開を果たす

 下線を引いた部分を、英語で表現することができますか?

辞書を10回引くより効果がある

 それではWikipediaのPlotを実際に引用して、答え合わせをしましょう。

In desperation, Satsuki pleads for Totoro’s help. Totoro summons the Catbus, which carries Satsuki to Mei‘s location, and the sisters reunite.
Wikipediaより

「必死に=in desperation」「呼び出す=summon」「再開する=reunite」が出てきたでしょうか(※Plotでは現在形を用いるのが一般的です)。

 desperation(必死さ、死に物狂い)は、inと結びつくことで「必死に(=desperately)」という意味を表します。

 この表現と、サツキが必死にトトロに助けを求めるシーンがセットで頭に入ってくることで、

「あのような必死さをin desperationで表現できるのか」

 という具合に、単語や表現の持つ「イメージ」や、その「使いどころ」が見えてくるようになります。

 こうしたことは辞書を10回引いてもなかなか理解できないものですが、シーンとセットにすれば一発で身につきます。それぐらい効果の高い学習法なのです。

 他にも、summonやreuniteなどは、何となく知っていても、自分で使うのは難しいですよね。

 その主な原因は、実際に使われている場面に遭遇していないから。

 映画で視聴した内容と、Plotの中で使われるこうした語句を照らし合わせることで、自分でも使えるようになり、表現力が伸びていきますよ。

 しかも、映画を通じて楽しく学ぶことができるので、継続しやすい学習法です。ぜひ取り入れてみてください。

 ちなみに、WikipediaにはPlot以外にもProduction(その映画の制作過程の紹介)やReception(興行収入や批評家による評価)などの項目もあるので、興味があればこれらも読んでみましょう。

 このように、視聴した作品のPlotを読むことで、少しずつ単語の使い方が身についてきますが、さらに効率的に単語の運用能力を高めたいという方には、拙著『話す力が身につく 5分間英単語』をお薦めします。