誰でも「頭がいい人」のように思考するためのツール「フレームワーク」。だが世の中には、いろいろなフレームワークが溢れていて、「いざ使ってみよう!」というときにどれを使えばいいのかわからない…。こんな悩みをかかえている人も多いだろう。それを解決してくれるのが、『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』だ。厳選されたフレームワークだけを紹介し、使い方のコツをシンプルにまとめた非常に便利な1冊だ。本連載では、本書の内容から、「誰でも実践できる考えるワザ」をお伝えしていく。
7Sとは?
7つの要素について、個々の状況を知るとともに、それぞれが整合しているかを見ます。優れた企業では、各要素がお互いを補い、強め合いながら戦略の実行に向かっているとされています。
Shared Value (共通の価値観・理念):組織に根付いた価値観です。たとえば、社会的善を旨とする、顧客第一主義などです。
Style(組織文化・経営スタイル):企業で受け入れられやすい考え方、行動です。新しいことにチャレンジすることをよしとする、スピーディに動くなどです。
Staff(人材):従業員の特性です。能力面やメンタリティの特徴が特に重要です。
Skill(組織スキル):組織として持つ能力です。商品開発が巧み、広告がうまいなどです。
Strategy(戦略):競争に勝ち、業績を上げるための方向性です。
Structure(組織構造):組織の分け方(機能別、事業部別など)や階層数などの組織図上の特徴です。
System(経営システム):人事、管理会計、会議体など、組織を運営するための仕組みです。
このうち、ハードの3つは、変えようとする意思やプランがあれば、変更することが比較的容易ですが、ソフトの4つは、人の意識やスキルレベルなどが色濃く絡むだけに慣性が働き、強制的にまたは短時間に変更することは難しいとされています。
図表28-2は、7Sを組織変革の観点から並べてみたものです。
まず環境変化があり、それが戦略の変更を要請します。
System(特に人事評価など)とStructureを変革のツールとして用い、かつ強力なリーダーシップによるコミュニケーションなどを総動員し、変わりにくいソフトの4つのSを根気強く変えていくことが求められます。
事例で確認
ここでは7Sの事例として、(近年はやや不振ですが)2000年代まではエクセレントカンパニーとして他社にもベンチマークされることの多かった、かつてのGEの例を見てみましょう。
Strategy:以前より集中と選択をしていたが、昨今ではプラスチック事業や金融事業の売却を行うなどますますそれを加速し、重電、インフラ、ヘルスケアといった社会問題解決につながる分野で圧倒的なポジションを築くことを目指している。
Structure:全世界に支店を持ち、それぞれがプロフィットセンターになっている。構造そのものは比較的オーソドックス。
System:特に人材育成の仕組みに特徴がある。コーポレイトユニバーシティやリーダー選抜の方法論は他企業のお手本とされるくらい洗練されている。人事考課はかなり厳し目。
Shared Value:「GEグロースバリュー」と呼ばれる人の成長に関する価値観がある。リーダー育成こそが使命という意識が強い。
Style:目標達成意識がかなり強い。一方でチームプレイや後進の育成をする文化がある。
Staff:個々人の能力は高く、メンタル面でも強い人間が多い。
Skill:特にリーダー育成に強みを持つ。被買収企業を100日で同化させるなどのスキルもある。スピードがとにかく速い。
・ある企業の組織的特性を知る
・ある企業の問題点を知る(不整合を起こしている個所を知る)
・組織の変革に向けてボトルネックとなっている個所を知る
1.
7Sの分析ではそれぞれの要素が整合していることが大事とされていますが、単に整合しているだけではなく、本文中に示したGEのように、高い次元で整合していることが望まれます。たとえば、本来ポテンシャルを持つ人材を抱えているにもかかわらず、戦略のストレッチ度合いが低く、全体のモチベーションも低く、減点主義で誰もリスクを取らない、従業員の能力も伸びていないという状態は、望ましいものではありません。人間が持つ潜在的な可能性が表出しているかが重要です。
2.
組織変革の途中では、むしろ7つのSが整合していないのが普通です。本文でも触れたように、ハードの3Sの変化にソフトの4Sが追いついてこないからです。あまりに乖離が大きくなると組織運営に支障をきたしますので、4Sが追いつける程度の3Sを立案することや、何が特に変革に取り残されているかを知ることが必要です。日本企業では、アメリカ企業ほど簡単には人員の入れ替えをできないことも、4Sがなかなか追いついてこないという問題の一因となっています。