誰でも「頭がいい人」のように思考するためのツール「フレームワーク」。だが世の中には、いろいろなフレームワークが溢れていて、「いざ使ってみよう!」というときにどれを使えばいいのかわからない…。こんな悩みをかかえている人も多いだろう。それを解決してくれるのが、『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』だ。厳選されたフレームワークだけを紹介し、使い方のコツをシンプルにまとめた非常に便利な1冊だ。本連載では、本書の内容から、「誰でも実践できる考えるワザ」をお伝えしていく。
ブランド・エクイティとは?
ブランドが企業にとって競争上も重要な資産であることは論を待ちませんが、かつては、その資産的価値を測定するという試みはあまりなされていませんでした。
また、ブランドがどのような要素で構成されるかについても統一された見解はありませんでした。
そこで提案されたのが、上記4つの要素からブランドの価値が成り立っているというブランド・エクイティのフレームワークと、それを具体的に金銭価値に評価する方法論です。
まず、ブランド・エクイティを構成する4つの要素は以下のように説明されます。
ブランド認知:
そのブランドが「どの程度知られているか」と同時に、「どのように知られているか」ということを指します。人はなじみのあるものを好み、信頼する傾向があるので、他の条件が同じであれば、認知度の高いブランドのほうが有利となります。ブランド認知は、「コンビニといえば○○」といったように頭に思い浮かぶブランド再生(純粋想起)と、「○○を聞いたことがある、知っている」というブランド再認(助成想起)に分けることができ、認知の「深さ」を測る指標となっています。
知覚品質:
消費者がある製品やサービスを、各自の購入目的に照らして競合製品と比べた際に知覚できる品質や優位性のことです。性能や付加的サービス、そして信頼性などによって決まってきます。ポイントは、「知覚」された品質という点です。どれだけ実物が優れていても、それが顧客に伝わっていないと意味がありません。
ブランド・ロイヤルティ:
顧客がブランドに対してどの程度忠誠心または執着心を持っているかということです。ロイヤルティが高いほど、顧客は他のブランドにスイッチしにくく、またリピート購買やポジティブな口コミなどを行ってくれるため、企業は安定的な収益が得やすくなります。
ブランド連想:
顧客がそのブランドに関して連想できるすべてのものを指します。ハウステンボスであれば、「長崎」「広い敷地」「ユニークなホテル」「ハウステンボス号」、あるいは個々のアトラクションが典型的に該当します。ポジティブで強い連想を顧客の心の中に刻み込んでもらうための努力が必要となります。
ブランド・エクイティを金額換算する評価方法としては、ブランドの構築にかかった費用の総額を測定する「コスト・アプローチ」、ブランドが将来生み出すキャッシュを予測して現在価値に割り戻す「キャッシュフロー・アプローチ」、実際に市場で取引されている類似ブランドの価格をもとに評価額を決定する「マーケット・アプローチ」の3つが代表的です。通常は複数のアプローチを併用します。
事例で確認
ここではプロ野球球団の阪神タイガースを取り上げましょう。日本人であればプロ野球に興味がなくとも名前くらいは聞いたことがあるはずです。
おそらく、読売ジャイアンツに次ぐブランド・エクイティを持つ球団と言えるでしょう。その要素を図表26-2にまとめてみました。
1990年代には暗黒時代もありましたが、それでも多くのファンは見捨てませんでした。心理的な思い入れが他球団へのスイッチを妨げたものと思われますが、これは希有なケースと言えるでしょう。
・無形資産である自社のブランド価値を測定する
・ブランド価値を高める上でどこに問題があるかを知る
・6競合ブランドとの価値の差異を認識し、マーケティング施策に活かす
1.
ブランドは、突き詰めれば「信頼」「信用」「実績」を反映します。しかし、どれだけこうした要素が強くとも、それを正しく伝える努力をしないと、ブランド・エクイティは向上しません。「知る人ぞ知る良い会社(製品)」ではブランド・エクイティは高まらないのです。
そのためには、継続的にコミュニケーションを行い、常に顧客の頭の中に「好き」あるいは「信頼できる」という印象を残し続ける必要があります。ただし、往々にして、コミュニケーションを重視するあまり、本体のクオリティがなおざりになることがあります。これでは本末転倒です。製品やサービスの実態の良さを高めつつ、同時に適切なコミュニケーションを行うことが必要なのです。
2.
特にブランド認知やブランド・ロイヤルティはKPI(例:純粋想起率、再認想起率、リピート率など)を設定して測定することが容易なので、適宜定点観測を行うことが有効です。
その際には、競合企業との比較などを行うと、さらに具体的な打ち手につながりやすくなります。ブランド連想は定量化がやや難しいですが、それでもネガティブな連想が増えていないかなど、ブランド・エクイティの低下につながる兆候は早めに押さえておきたいものです。