スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。
世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。そのトップがオンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長のデビュー作『スタンフォード式生き抜く力』が話題となっている。
ベストセラー作家で“日本一のマーケッター(マーケティングの世界的権威・ECHO賞国際審査員)”と評された神田昌典氏も、
現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる
と語った本書の要点と本に掲載できなかった最新情報をコンパクトに解説する本連載。
情報7daysニュースキャスター」や「朝日新聞be on Saturdayフロントランナー」出演で話題の著者が、スタンフォードから最新の「科学的な子育て」をお届けする。

ガッツポーズPhoto: Adobe Stock

子どものコミュ力が上がる
サーブ&リターンの習慣とは?

ますます複雑化する社会で、仕事をしながらの子育ては本当に難しいですね。

今回も、科学的な根拠があり、シンプルで効果的な子育てのテクニックをお伝えしていきましょう。

今回紹介するのは「サーブ&リターン(Serve&Return)」と呼ばれるテクニックです。

これはハーバード大学の「こども発達センター」が推奨するもの。

とてもシンプルな方法で、すぐに実践できるものです。

では、そもそもサーブ&リターンとはどんなものなのか?
簡単にいうと、「サーブ」に対して、親がなんらかの「リターン」を返すことをいいます。

「サーブ」とは、子どもたちの問いかけや表情など、テニスでいう一打目のイメージです。

たとえば赤ちゃんが笑ったり、「バブバブ」と声を出したり、手足を動かすことすべてが赤ちゃんからの「サーブ」にあたります。

「サーブ」に対し、親が笑顔を返したり、話しかけたり、なでたりすることが「リターン」になります。

自分にきたサーブを打ち返すイメージです。

そうした「サーブ」と「リターン」のやりとりが、子どもの認知能力やコミュニケーション能力の発達に欠かせないことがわかってきています。

そうはいっても、つい子どものサーブに対してキツく当たってしまったり、無視したりなど、心当たりのある方も多いでしょう。

しかし、そうした日常のコミュニケーションが、子どもの脳の自然な発達を妨げる大きな原因になりかねないのです。

要するに、親は子どもの「サーブ」に目を凝らし、些細なことでも、子どもの反応に対してしっかりとした「リターン」を返すことが重要なのです。

赤ちゃんが笑ったら、親も笑顔で返す。

そうした小さな習慣が、子どもの認知能力やコミュニケーション能力を発達させ、柔軟な脳の成長をサポートする近道となるのです。

非常にシンプルな方法ではありますが、とても大事な習慣になります。

また、「サーブ&リターン」を取り入れることは、親子の安心できる信頼関係を築いていくことには欠かせません。

簡単でシンプルだからこそ後回しにしがちですが、この習慣を取り入れるかそうでないかで、大きな差が出てくることは間違いないでしょう。

赤ちゃんよりも大きくなった子どもたちにも効果的ですので、ぜひご家庭で取り入れてみてください。

子どもの知能アップにも
効果テキメン!

「サーブ&リターン」によって子どもとの信頼関係を築くことには、「子どもの知能がアップする」という実利的な意義もあります。

信頼関係が築かれると頭がよくなる?

そんな話を聞いても、どんな相関関係にあるのかイメージ湧かないですよね。

では、このメカニズムについて説明しましょう。

そのためにはまず、人間の「社会脳」について理解する必要があります。

人間は全身に対して脳の比率が最も大きい動物という話をどこかで聞いたことはないでしょうか?

では、なぜ人の脳はそんなに大きく発達する必要があったのか?

それは社会性に関する能力に関係しています。

太古の原始の時代、個体の強さに秀でていない人間が自然淘汰の中で優位に立つためには、大きな群れをつくる必要がありました。

要するに、周りと協力して仲良くやっていく、「社会性」の力をはぐくむ必要があったわけです。

そのために人の脳は、他の動物に比べて大きく肥大することになった。

これは「社会脳仮説」とも呼ばれます。

ですから、この社会性の能力こそ、人間の脳の中心を担っているわけです。

そのために、「サーブ&リターン」によって社会性を自然に養おうとするプロセスは、人間の脳の根本的なメカニズムにかなっているわけです。

それだけではありません。

社会性が脳の中心のシステムだということは、社会性の能力を鍛えることで、同時に他の脳機能も発達するということ。

要するに知能がアップする結果につながるのです。

これはおもしろいですよね。

暗記一辺倒は
子どもをつぶす

よく、「勉強が大事だ!」と、ペーパーテストのために知識を詰め込ませたり、暗記させたりといったアプローチをする人がいますが、これは効果的ではないのです。

一見、合理的ではないようにも思えるさまざまな体験があります。

たとえば、友達と笑ったり泣いたり、成功や挫折を経験したり、運動やアート、異文化を楽しんだり。

多様な体験を通じて脳をいろんな多面的アプローチで包括的に成長させることで、結果として「最も効率的に成績が上がる」のです。

実際に、これまで偉業を成し遂げたあらゆる天才たちの脳を分析した研究では、脳内の異なる部分同士のつながりがとても強くなっていることが発見されています。

つまり、目指すべき脳の状態とは、脳のいろんな部分をバランスよく発達させそれらがうまくつながっている状態なのです。

ですから、先ほど触れたように、詰め込み教育などで孤立した脳の一部がものすごく成長している状態を目指すことは、決して得策ではないのです。

いかがでしたか?

今回の記事でご紹介した「サーブ&リターン」で子どもとの信頼関係を築き「社会脳」を育てるということは、実は子どもの知能をアップさせるためにも最も効果的なのです。

ぜひ、日々の子どもとの関わりの中で実践してください。

このような人間の脳のメカニズムに基づく正しい教育方法や生存戦略などについては、私のデビュー作『スタンフォード式生き抜く力』にふんだんに盛り込んでいますのでぜひご覧ください。

さらに、本記事の内容は、最新刊『全米トップ校が親に教える57のこと』により詳しく書いてあるので、あわせてこちらもご参考にしてください。