一方、売り手であるディディの側としては、パッケージで販売することによって、送客をしてくれたアプリ(レストラン、ホテルなど)に対する手数料が発生しますが、販売価格が上がっているので手数料を払っても十分な収益を確保できます。

 加えて、チャネルが増えること、ほかのサービスと組み合わせた販売を行えることで、トラフィックは増加します。

 ディディのライドシェアサービス全体としては需要が増えるので、ドライバーは価格を上げやすくなります。価格が上がると、「こっちのほうが稼げるぞ」と判断したドライバーが集まり、さらに供給が増えます。供給が増えると、価格は下がり、適正化されます。

 ディディのサービスは、次のようなビジネスモデルになっています。

(1)SDKによってチャネルを増やすことでトラフィック(需要)が増え、人に応じたパッケージングができる
(2)増加した需要とパッケージングの個別性のおかげで価格を上げやすくなる
(3)価格が上がると、ライドシェアに参入するドライバー(供給)が増える
(4)供給が増えることで、価格は下がり、適正化される
(5)価格は下がっても、需要が増えるのでトータルの収益を確保できる

 このように、需要と供給が相互に喚起し合いながら、需要曲線・供給曲線の交差するポイントを押し上げるだけでなく、そこにパーソナライズされた「パッケージング」も価格を押し上げるファクターとなります。

 ちなみに、ユーザーの側からすると、全体のパッケージとして価格を提示されるので、もはやタクシー料金単体の「定価」がわかりません。これがディディのビジネスモデルの神髄ともいえる「究極のダイナミック・プライシング」のスキームなのです。

 ディディは2021年のニューヨーク証券取引所への上場の際、中国当局の調査によって、あまりに過熱した掛け合わせが疑問視され、その後上場廃止となりました。しかし2023年1月、正常な形でアプリが再開しています。現在、世界中から、今後の発展に熱視線が送られています。