子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では、船津氏のこれまでの著書から抜粋して、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。
人生は自分で選んでいることに気づかせる
人生は「選択」の連続です。朝早起きすることも、運動することも、本を読むことも、予習をすることも、授業中に居眠りすることも、宿題をすることも、ゲームをすることも、スマホをすることもすべて子どもが選択しています。
ただ、ほとんどの子どもが「自分で選んでいる」という意識がないのです。
「選択」研究の第一人者、コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授によると、一般的な人は1日に平均70の「選択」をしているそうです。
1日に活動している時間が16時間だとすると、誰もが14分間に一つ、何かを「選択」していることになります。
しかしこれは、「選択」を指折り数えながら1日を過ごした場合です。実際には日常の「選択」の90%は無意識に行われていると言われています。
つまり1日70の選択のうち「意識して選択している」ものはたった5~6に過ぎないのです。
たとえば、家に帰ってすぐ宿題に取り組める子どもは「勉強することを選択している」という意識があります。
その一方で、学校から帰るなりスマホをいじったり、ゲームに手を出してしまう子どもは、「ゲームすることを選択している」言い換えれば「宿題しないことを選択している」ことに気づいていないのです。
目に入ったゲームに(無意識で)手を伸ばしている状態です。
「自分の行動は自分で選択している」ことを子どもに意識させるには、「ああしなさい」「こうしなさい」という指示・命令をやめ、「勉強するのかしないのか、しっかり考えてあなたが選んでいいよ」と自分で考えて、選択するように伝えることが必要です。
ただし、「勝手にしなさい」「好きにしなさい」と突き放しては決していけません。親に守られているという前提があることで、子どもは難しいことにチャレンジできます。
また、選択に「優先順位」をつけることを教えてあげてください。「勉強とゲーム、どちらをいつやるのかあなたが決めてね」「ピアノの練習と学校の宿題、どちらをいつやるのかよく考えて決めてね」という要領です。
やるべきこと・やりたいことに優先順位を意識できるようになると、子どもは効率的に複数のタスクをこなしていける術を身につけます。
・無意識の行動を自覚させ、選択させる(決して強制しない)
・基本スタンスは、勝手にしなさいではなく、「あなたならできる」
・やるべきこと・やりたいことに優先順位をつけさせる
自分の人生を歩んでいいのだと繰り返し伝える
しかしながら、それまで「勉強しなさい」「宿題しなさい」と言われてきた子どもが突然「自分で考えて選んでいいよ」と言われても、どうしたらいいのかわかりません。
何よりも重要なことは、(大人が見て)合理的な選択をするということではなく、「自分の行動は自分で選択している」と、子どもに気づかせることです。
欧米の親たちが幼い子どもからティーンエイジャーまで、しつこいくらいに頻繁に使う表現が、「It's your choice」「It's up to you」です。
「自分で決めていいよ」という意味ですが、繰り返し「自分で決めていいよ」と言い続けないと、子どもは自分の行動を「自分で選んでいる」ことを意識できないのです。
人生の岐路において、どの道を選択するかによって、その後の人生はまったく違ったものになります。
人の意見や目先の利益に流されてしまうのか、自分の考えを信じて行くのか、どちらが悔いのない人生を歩めるのかは明白です。
ところが、たくさんの人が本意ではない選択をしてしまいます。その理由は、「怖いから」です。
自分のオリジナルの道を歩むのは怖いのです。みんなと一緒に歩いていたほうが安全で安心(と思い込んでいる)ので、本心にふたをして、人と同じ方向に進んでしまいます。
しかしながら、親が普段から「自分で決めていいよ」と伝えることで、子どもは自分のこと、自分の価値観、自分は何を大切にするのか、を考えるようになります。
ポイントはしつこく言い続けること。人間は弱い生き物ですから、放っておくと「みんな」の意見に流されるようになってしまいます。
そうならないよう、「人生は自分で選んでよい」のだと繰り返し伝え、「何があっても私たち(親)はついている」「あなたの味方である」ということを言葉で、行動で示すことです。
そして、親自身が毎日の行動を自分の意思で選択し、まわりが何と言おうが信念を持って子どもに真摯に向き合っていくことで、子どもは自分で選ぶことの価値を体感していきます。
(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)