「ポケモンスリープ」の満点“1日8.5時間睡眠”は長すぎ?睡眠の専門家の評価は…写真はイメージです Photo:PIXTA

世界中で愛されているゲームシリーズ「ポケットモンスター」。メインは家庭用ゲーム機で遊べるロールプレイングゲームだが、カードゲームやアプリゲームなど、幅広く展開している。そんなポケモンシリーズから2023年7月、「ポケモンスリープ」なる睡眠ゲームアプリが登場。“睡眠”と“ゲーム”の融合がもたらすメリットや、眠りを邪魔しないプレイの注意点を、上級睡眠健康指導士の加賀照虎氏に聞いた。(清談社 鶉野珠子)

スマホだけでは難しい?
眠りの深さを計測する方法

「ポケモンスリープ」は、プレイヤーが実際に眠ることで“遊ぶ”スマートフォン向け睡眠ゲームアプリだ。基本のプレイ方法は、毎晩枕元にスマートフォンを置いて寝るだけ。すると、アプリが睡眠時間や睡眠中の様子を計測、さらにデータを記録・分析してくれる。

「寝不足だと、仕事で作業ミスが増えたり、居眠り運転をしてトラックの衝突事故を起こしたり、イライラして社内の空気を悪くしたりと、生産性を低下させます。米国シンクタンクのランド研究所が2016年に発表した調査内容によると、日本の睡眠不足による経済的損失は年間15兆円にも上るそうです。先進国でもトップクラスの睡眠不足大国である日本において、“睡眠”と“ゲーム”を融合し、楽しみながら睡眠改善の効果が期待できるというのは、個人にも社会にもプラスが大きいと思います」(加賀氏、以下同)

 リリース後、早速加賀氏もプレイしてみたという。率直な感想を聞くと、「睡眠計測の精度に関しては、そこまで高くないと思います」とのこと。

「これは『ポケモンスリープ』というより、スマホだけを使う睡眠計測の仕組みが原因です。スマホのみで計測する場合、『加速度センサー』で動きを検知し、寝返りなどから睡眠の深さを読み取っています。しかし、体動だけで睡眠の深さを正確に測るのは、かなり難しいのです。最近だとスマートウオッチやスマートリングなどで脈拍も計測し、体動+脈拍でより高精度なデータが手軽に測れるようになってきていますが、それでも、眠りのサイクルは完璧には捉えきれません」

 睡眠の深さの判断には、筋肉の動き、心拍数に加え、脳波が大きく関わっている。正確に眠りのサイクルをキャッチするには、脳波の計測が欠かせないのだ。

「加速度センサーを用いる計測方法は、寝具によっても結果が左右されます。たとえば、超低反発のマットレスだと衝撃吸収性が高すぎて、寝返りをあまり検知してくれないことも。『ポケモンスリープ』に限った話ではありませんが、『スマホを置いておくだけ』の睡眠計測アプリのデータは、あまりアテにならないと思ったほうがいいでしょう」

 SNSをのぞくと「ポケモンスリープで眠りの深さを確認したら、波形が少しも変化せず一定のままだった…」と不安になっている人もいたが、そういう人は寝具の影響があるのかもしれない。