そして、晩婚化の主要な原因として、女性の社会進出を挙げていました。「仕事をしたい」という女性が増えてきたから、結婚して子どもを産むこと──女性にとっては仕事をあきらめるという選択──を先延ばしする女性が増えてきたというわけです。

 そのため、日本と同じく少子化を克服しようとしているヨーロッパの国々(フランスや北欧諸国、オランダなど)を参考にして、それと同じように、子どもを育てながら働けるように状況を整えれば、早く結婚して子どもを産むはずだという前提で、保育所の増設などさまざまな政策がとられていったのです。

 そんな中で私は、「これは晩婚化ではなく、未婚化である」と主張しました。具体的には、「未婚化を克服しないと、少子化も克服できない」という見解を唱えました。この主張に多少なりとも賛同してくれた人がいたから、当時からマスコミに出たり政府関係の委員にも登用されたりしたのですが、公の学説なり政策なりに「見当違いではないか」と異議を申し立てたのです。

 なぜ、そのような確信がもてたのか。

 1990年から1992年にかけて、私は宮本みち子さん(千葉大学教授・当時)らと共に、『パラサイト・シングルの時代』の執筆のもとになった、20代の親同居未婚者のインタビューおよびアンケート調査を行っていました。結婚をしていない20代の男女とその親世代の人々にインタビューをしたわけですが、話を聞けば聞くほど、当時語られていた「通説」が間違っているのではないかという結論に至りました。