そのときに出会った親同居未婚者たちの中には、確かに「いまの生活を楽しみたいから結婚を先延ばしにしている」という人はいましたが、重要なのは「結婚したくないから結婚していない」という人はほとんどいなかったという点なのです。

 特に、女性の場合がそうでした。当時の女性の大学進学率(4年制)は2割です。8割は短大卒および高卒、中卒です。そんな8割に属する女性たちの話を聞くと、仕事をしたいから結婚しないという人はほとんどいなくて、むしろ「いい男がいないから結婚していない」と答える人が大半でした。

 その後も、厚生省(当時)の研究会などで未婚者の実態調査を続けました。

 そして私が得た結論は、通説とは異なり、「現在の社会現象は、晩婚化ではなく、未婚化である」というものだったのです。

 つまり、「生涯一度も結婚しない人が増えるだろう」という主張です。それも、ヨーロッパのように「結婚したくないから結婚しない」のではなくて、「結婚したくても結婚できない人」が増えていく。結婚したいのに結婚できないまま生涯を終える男女の増加、すなわち「結婚困難社会」を予測したわけです。

結婚できない人はなぜ増えたのか

「結婚していない」もしくは「結婚できない」人たちが増えた原因は何でしょう。

 私は次のような説を展開しました。それは単に、男女の意識変化ではない。そうではなく、結婚をめぐる社会、とりわけ経済状況が変わったのだと。つまり、個人の意識はむしろ変わらないまま社会の変化が進み、結婚が減った。その結果として独身者が増え、独身でも生活できる仕組みが整ったということです。