留学生や主婦までも
活用する中国のスパイ

 中国のスパイ活動は、駐日中国大使館の1等書記官によるスパイ事件「李春光事件」のような大使館員に偽装したプロのスパイも当然ながらあるが、ビジネスマンや留学生、主婦などあらゆるチャンネルを利用して行うところに特徴がある。

 その一例として、日本人男性と結婚した華僑の女性が、夫の友人である日本人女性研究者に接近を試みていた事案もある。

 スパイ活動の拠点は、元麻布にある大使館や全国の総領事館であり、留学生スパイを統括・運営する拠点は江東区の中国大使館教育処と指摘されている。

 また、ロイターによれば、中国国営メディアである新華社のカナダ支局に勤務していたマーク・ブーリエ氏が、新華社は報道機関ではなく諜報機関だと指摘しており、実際、新華社はインテリジェンスコミュニティーでは知られた存在だ。新華社の東京支局は恵比寿に所在するが、民間での情報漏えい事案で同所に出入りする人物の関与が疑われた事案もある。

 中国スパイの拠点は中華料理店や一般の住宅を偽装したものもある。例えば、「日本人一家」が住んでいる戸建てが、実際は中国人工作員たちが家族を装い拠点としているといった具合だ。周辺住民からすれば全く想像できないだろう。

 一方で、最近では中国製Web会議システムやメッセンジャーアプリを活用し、オンラインで集合や指示を行うなど、拠点が一部オンライン化している。

 中国スパイ活動の最大の脅威はそのネットワークである。コミュニティーを最大限に活用して協力者を獲得・拡大していく。地域コミュニティーや同窓コミュニティー、日中友好コミュニティーなどあらゆるコミュニティーにスパイ(=忠誠心が強い人物)を潜ませ、コミュニティー内の人物やその交友関係にある人物を協力者とする。そして、コミュニティー内で収集した情報は集約・蓄積され、次のスパイリクルートに活用される。

 また、反体制派のあぶり出しも行われ、例えば留学生スパイが収集した反体制思想の学生に関する情報を集約し、データベース化している。

 中国スパイは、プロパガンダや資金提供などを通じた政治への影響力行使といった各種工作にも力を入れているほか、スマートフォンやスマートウオッチ、ルーターなどのIT機器やアプリなどを駆使したスパイ活動にもたけている。

 先述の通り、ビジネスマンや留学生たちがスパイ活動をする一方で、実情として、善意のビジネスマンや留学生が中国政府に“利用”されているケースも多く、一概に国籍のみをもって差別することは絶対に許されない。