この論文の論評を執筆した、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院外科・公衆衛生センターのGilbert Welch氏とTanujit Dey氏は、「この研究で対象とされたような大規模なRCTは、政策立案者の間で注目度が高まりつつある、複数のがんを検出できる高価な血液検査の影響を理解する上で必要になるだろう」と話す。両氏は、がん検診には欠点があることを指摘する。なぜなら、偽陽性の判定は患者の不安を増大させる一方で、偽陰性の判定は、実際には安全でないにもかかわらず安全だと思わせるからだ。

 また、不必要な治療が有害となり得ることも指摘している。その上で同氏らは、「重要なのは、一部の人が得るベネフィットが、多くの人々にもたらす悪影響を正当化できるほど十分なものかどうかという問題だ。複数のがんを検出できる血液検査は、人々の命を救い、それに伴う費用や害を正当化する可能性は十分にあるが、検証してみない限り、明確なことは分からない」と述べている。

寿命の延長よりも
早期死亡の減少が目的

 米国がん協会の最高科学責任者であるWilliam Dahut氏は、「がん検診の延命効果を明らかにするには、患者を長期間追跡する極めて大規模な臨床試験が必要だろう」とCNNに対して語っている。同氏は、「今回の研究で対象とされた臨床試験では、がん検診の効果が検出されなかったかもしれないが、がん検診は、実際には子宮頸がんと前立腺がんの患者数を減少させるなど、がんによる死亡に影響を与えていると思われる」と話す。

 Dahut氏は、「そもそもがん検診は、寿命を延長させるためのものではなく、がんによる早期死亡を減少させるためのものだ」と主張する。そして、「例えば、ある人の寿命が80歳である場合、がん検診によって可能なのは65歳での早期死亡を防ぐことであり、90歳まで寿命を延ばすことではない」と説明する。

 さらにDahut氏は「がん検診を受けることで100歳まで生きられるなどと言っている人はいない。ただ、がんは死因としては2番目に多いものであり、85歳前の死因としては最も多いことが知られている。それゆえ、がんに関連する症状やがんによる早期死亡を阻止することは、意義のあることなのだ」と付言している。(HealthDay News 2023年8月28日)

https://consumer.healthday.com/cancer-screening-2664550946.html

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