男子代表HCへの転身後も
女子代表を育てた「3カ条」を継続

 男子代表HCへの転身後は、女子代表を躍進させた3カ条がそのまま引き継がれた。攻守両面のスピード、正確な3ポイントシュート、そして粘り強いディフェンスをホーバスHCは繰り返し強調してきた。

「確かに日本人は小さいが、視点を変えればそこがポジティブな要素になる。スピードがあれば大きな相手は私たちをマークできないし、ディフェンスするのも難しくなる。3ポイントシュートもよく入るし、細かい努力を惜しまない国民性や団結力の高さも強みになる。もともと他国よりもある体力をさらにつけて、最終クオーターまで日本のバスケットを出せば相手はついて来られない」

 スピードは今大会で世界に名を知らしめた22歳のポイントガード、身長172cmの河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)を中心に何度もコート上で発動された。2月に日本国籍を取得したジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)は、センターながら大事な場面で何本も3ポイントシュートを決めた。

 そして、粘り強いディフェンスが相手の体力を削ぎ落とす。カーボベルデ戦を除いて、後半戦のスコアで相手を上回ったのは必然だった。ただ、しつこいディフェンスを生み出すスタミナは、過酷な練習でしか養われない。ホーバスHCは女子代表を率いたときと同じ理論を説いた。

「楽しい練習は存在しない。一番楽しいのは勝つこと。だから練習は常に厳しくなる」

 チームとして共有する目標をパリ五輪出場権獲得に設定。その上で日本人だからこそ実践できる3カ条をベースに、さまざまなルールを設けた。プレー面では攻守両面における数々の複雑なフォーメーション。そして、見逃せないのはメンタル面での決まりごとだ。

 その筆頭が「逆境に陥ってもヘッドダウンしない」となる。どんな状況でも下を向かない姿勢は、ドイツとオーストラリアに負けても、フィンランドとベネズエラに大量リードを許しても、そしてカーボベルデに猛追されても貫かれ続けた。

 東京五輪における名言となった「日本にスーパースターはいない。試合ごとに異なる選手が活躍するスーパーチームが日本だ」も、そのまま男子代表に引き継がれた。

 フィンランド戦はスピードを武器に25得点9アシストをマークした河村が脚光を浴び、チーム最多の28得点を挙げ、19リバウンドもマークしたホーキンソンがいぶし銀の輝きを放った。

 ベネズエラ戦では現代表の誰よりも冬の時代を知る最年長メンバーの33歳、シューティングガードの比江島慎(宇都宮ブレックス)が救世主になった。7本放った3ポイントシュートのうち6本を成功させた比江島は、チーム最多の23得点のうち第4クオーターだけで17得点を挙げた。

 カーボベルデ戦のヒーローは、6本連続で3ポイントシュートを決めた22歳のシューティングガード、富永啓生(ネブラスカ大)。そして、3点差に追い上げられた大ピンチで、3ポイントシュートを含めて連続6点をたたき出したホーキンソンの勇姿はこれからも語り継がれるだろう。