職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
そんな悩みをズバッと解決する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんは、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介するプロです。この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「褒められたときのとっさの一言」について紹介しましょう。
言葉がけへの苦手意識
あなたは、仕事中にお客さまから褒められたとき、どのような言葉を返していますか?
私は、研修講師として、お客さまとの関係性の構築を目的にしたコミュニケーションを教えています。
たとえば、旅館やホテルでは、接客スタッフの方々に向けて研修をしています。
そこではロールプレイングで指導を進めています。
ただ、若手の方々の多くが、お客さまへの「ちょっとした言葉がけ」に苦手意識を持っているなと感じます。
「ありがとう」だけでは物足りない?
これは、ある温泉旅館で、「いいお湯ですね~」とお客さまから褒めていただいたシーンをロールプレイングしたときのことです。
そうやって褒めていただいたあと、
「ありがとうございます」
という返事は、参加者全員が言えることです。
しかし、そこから先が出てくる人はほとんどいません。
ここで、お客さまの気持ちを考えてみましょう。
「いいお湯ですね~」と声をかけてこられたということは、スタッフさんと「心地よさ」を共有したいのでしょう。
そう考えると、「ありがとう」だけでは、少し物足りなさを感じるかもしれませんね。
「とっさの一言」を共有しておこう
感じのいい人なら、「ありがとう」にもう一言を添えることができます。
たとえば、
「ありがとうございます。美肌効果があると言われているお湯なんです」
と情報を伝えてもいいですし、
「ありがとうございます。露天風呂も楽しまれましたか?」
と質問してみる方法もあります。
というように、実際に私がおこなう研修では、グループ内の参加者全員に一言ずつを考えてもらうようにしています。
5人のグループなら、5通りの「もう一言」を共有することができますね。
温泉旅館に限らず、営業職や顧客対応の場面でも、よくあることだと思います。
ぜひ、そのときの「とっさの一言」を、仲間同士で出し合ってみましょう。
そのように、「あのとき、ああ言えばよかったな……」という後悔をなくしていくことで、表現や語彙が増え、言葉がけへの苦手意識が払しょくされていくはずです。
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。