おもしろい取り組みとして、Cさんのチームは週次のミーティングの際、数値の確認と改善案だけでなく「業務を通じて、どのような嬉しいことや価値を顧客に対して提供できたか」を、顧客の声をベースに必ず取り上げ話し合っていた。定量的な数値だけでなく、定性面も取り上げることで、業務の意味合いや、目指すべき行動を相互に理解し、共有する場をつくる。結果として、メンバーは創出している価値を多くの機会で実感できていた。
Cさんは、そのうえメンバーにも個々のキャリアに配慮した機会提供を行っていた。単に話を聞くだけではなく、それぞれ「何がしたくてこの会社に入社してきたのか」という動機や、「何を実現したいのか」という目標を深く理解することに努めている。しかも、その内容をチーム内でも共有し、定期的に対話しているので、それぞれのメンバーが、中長期や短期でどこを目指しているのかがチーム内で理解し合えているという。
また、それぞれのメンバーの目指す姿に向け、どのような成長ステップを踏みどんな能力を高めていくか、四半期~半期単位で対話し、すり合わせている。レベル感や志向にあわせ、あるメンバーは企画提案にフォーカス、あるメンバーは巻き込み力が求められるプロジェクトマネジメントに集中など、ある程度メリハリをつけて役割や機会を提供している。
もちろん、組織で働く以上、すべての業務が個々のメンバーのやりたいことや、成長目標と直結するわけではないのが現実だ。ただ、個人の「ありたい姿」、成長との重なり、ひいては市場価値向上を、組織の方向性と紐づけて少しでも機会提供しようという姿勢が、メンバーからの信頼にもつながっていた。
ここまでくれば、「この事業が何のためにあるのかわかりません」「この会社・組織にいて自分が成長できるとは思いません」のような言葉は少なくなる。
成長機会についても、違う業種のお客さんに提案する機会をアサインしてみたり、メンバーの余力がある範囲でマネジメントを部分的に任せてみる、他組織との共同プロジェクト機会を作るなど、できる工夫はいろいろある。
やや極端に書いたが、離職率の高いAさん、Bさん、離職率が低くメンバーも育っていくCさんの言動の違いが伝わっただろうか。