そして、その各自に課せられたKPIを毎週管理し、目標が達成できたかどうかを確認し、未達の場合には指導をして、毎日、朝と夜に行動進捗をマネジメントしている。

 Aさんの方針は、「数字こそが成果。数字はすべて逐一報告」「とにかく行動量がすべて。1顧客あたりの稼働時間を短縮し、多くの顧客対応を」などであった。

 数値をもとにマネジメントし、マネジャー自身もプレイングマネジャーとして成果を出している点はとてもいいのだが、数字とマネジャーが決めた行動だけを徹底的に追いかけているメンバー側は、「何のための仕事か」がわかりづらく、やりがいも感じにくく、心身ともに疲弊し、その結果、離職していくケースが散見された。実際、現場の話を聞くと、数字のチェックと課題の叱責が多く、成果を出しているメンバーを含め、全体のコンディションは非常に悪かった。

 成果を出しているメンバーの離職が増えると、目標達成への難易度がより上がり、さらにマイクロマネジメントが加速。現場は余計に忙しくなるが、離職したメンバーを責めるばかりでマネジャーの行動が改まることはなく、とにかく行動量を増やし差分を少しでも埋めようとする。生産性を高めるために「決めたとおりに行動」、少しでも違うことをすると「非効率なことはやめろ」と押さえつけるマネジメントスタイルによって、メンバーは完全に萎縮してしまっていた。

 ついには、離職があまりに増えて、目標を大きく下回るように。経営としても、Aさんの下にメンバーを置くとコンディションが悪化するので、今後の扱いに苦慮している。

 一方、なぜか離職率が高いマネジャーBさん。

 Bさんは人として好かれやすいマネジャーであり、メンバーの意向も尊重している。だが、このチームは目標達成率のブレが大きい。メンバーの離職が著しく多いわけではないが、成長意欲の高い優秀な人材の離職が多い点には、経営側も頭を悩ませている。

 具体的なマネジメントスタイルを見てみると、Bさんは、メンバーとの対話はしており、本人がやりたいことを聞いたり、意向も尊重している。プライベートも含めた雑談もあり、メンバーとの仲もいい。Bさん自身も「いい人」だと言われている。

 仮にキャリアについても相談があれば話を聞いて、意見を基本的には受け入れる。一方で、実務については、ほぼ、それぞれのメンバー任せ。あまり介入せず、成果が出たら「よかったね」。悪くても「次は頑張ってね」と声をかける程度だ。