トーマス・カーライル(1795~1881年)はイギリス(大英帝国)の歴史家、思想家である。作家の夏目漱石はロンドンに留学したおり、カーライルの居宅跡を開放している記念館を4回も訪れ、小説『吾輩は猫である』にもカーライルの名前が出てくる。

 さて、この話のポイントは、大きくて複雑な事柄(家庭や人生のこと)と小さくて単純なもの(裁縫箱)を対比した点にあろう。彼が言いたかったのは「一事が万事」(1つの小さな事柄の具合が他のすべてのことに現れる)なので、まずは1つの小さな所から手をつけなさいということだ。

 裁縫箱やタンス、部屋などが整理整頓されているかどうかは、その家の住人の心の中が整理整頓されているかどうかに対応する。もう少し言えば、家の中がきれいな人は心の中もきれいであるということだ。

 ドイツには「整理整頓は人生の半分である」という格言がある(『心を整える』長谷部誠著、幻冬舎文庫)。これをもじれば「整理整頓は仕事の半分である」と言えるだろう。

 机の上や引き出しの中を整理整頓している人は仕事ができる人である。また、パソコンのデスクトップ(起動後に表示される基本画面)がすっきりしている人、フォルダやファイルが一定のルールに基づいて階層分けされ、適切な名前がついている人は仕事のできる人であるのは間違いない。目的のデータに素早くアクセスできる点で効率性が高く、データを紛失するなどのミスも防止できるからだ。

書影『ものの見方が変わる 座右の寓話』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『人生の道しるべになる 座右の寓話』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
戸田智弘 著

 人生は後戻りできない旅である。私たちの誰もが「初めての人生」を歩んでいる。青年・成人期、壮年期、熟年期のどの段階にいる人であっても、みんながその段階の初心者として毎日を生き、その次の段階を見据えながら歩みを進めている。

 なじみのない道を歩く旅人にとって道路標識が役に立つのと同様に、常に「初めての人生」を歩んでいる我々にとっても〈道しるべ〉は有益である。

 寓話は先人が残してくれた人類の貴重な遺産であり、そこにはよく生きるための〈教え〉が凝縮されている。そういう意味で寓話は〈人生の道しるべ〉になる。

 道に迷ったときや先行きが見えないときはもちろんのこと、苦しいときやつらいとき、勇気が出ないとき、自信を失ったとき、目標を見失ったとき、将来に不安を覚えたとき、はるか昔から語り継がれてきた寓話は、私たちにさまざまな指針を与えてくれるだろう。