「消費税増税」は財界トップにとって
最もダメージが少ない
財界から見れば(1)と(2)の解決策は不都合です。そもそも財界としては企業の利益をもっと増やしたいし、それは決して自分たちの利益だけでなく日本経済が活性化するための重要な手段であり使命だと考えます。
産業が発展するためには投資が必要で、そのためには資金が必要です。立場として、法人税は増税するどころか減税が必要だと主張するのが財界トップのスタンスです。
(2)も同じ観点で不都合です。社会保険料を値上げするということは厚生年金も値上げされます。その半分は個人が納めるのですが残り半分は企業が納めるルールです。ですから社会保険料値上げは最悪の選択肢で、個人も法人も手持ち資金が減る解決策です。
それと比べれば、(3)消費税増税が一番いい。
だから、財界としては中長期的に消費税を増税することで政策に必要な財源を賄うように提言したわけです。
「え、それでも消費税を値上げすると日本経済が停滞して結局同じなんじゃないの?」
と思われるかもしれません。
確かに黒田バズーカの異次元緩和がうまくいかなかった有力な理由として2014年、2019年と消費増税が日本の景気の足を引っ張ったという説があります。消費税を増税すればそれと同じことが起きそうです。
しかし、経団連の幹部の顔触れをみるとそうでもないことがわかります。
会長は住友化学出身で副会長は三井物産、日立、パナソニック、三菱重工業、旭化成といった日本を代表する企業で占められています。金融機関を除くと、幹部の会社の海外売上比率は平均5割です。つまり、法人税減税で投資を行えば、半分は日本でそして半分は海外で、お金を稼げます。消費税増税のダメージは半分で済むのです。
このように考えて(3)を提言することは、財界のトップの意思決定としては意味のある決定をしたことになるのですが、結果として消費税が増税されて生活がさらに苦しくなるとしたら、結局苦しむのは国民です。この意思決定プロセスのどこかに問題はないのでしょうか。