長いものに巻かれる人は、日本社会にあふれている

<なんの価値観も、信念も、理念も持っておらず、「その時、その都度にあって、最も自分にとって利益のある価値観や体制にすり寄っていく」。そういったある種の日本人の醜悪さを凝縮したのが鮫島です。

もしかしたら鮫島は元々軍国主義者ですらなかったのではないか。「今だけ、金だけ、自分だけ」。それのみを考えていたからこそ、簡単に逆のことを言うわけです。

今でもいますよね。「体制に阿(おもね)った方がお得なんだ」と言わんばかりに、微温的に権力を擁護して日銭を稼いだり、権力との距離をカードにどこかの大学の教員やシンクタンクの役員になったり、あるいは同様に、権力との近さを匂わせて自然エネルギーで儲けようとしたり。こういう連中は全部鮫島ですよね>(婦人公論.jp 23年8月15日

 いかがだろう、皆さんの周りにも思い当たる人がいるのではないか。手のひら返しで、長いものに巻かれる人など、あなたの会社にもたくさんいるだろう。

 個人的には、「マスコミ」にも当てはまる指摘だと思う。SDGsがどうしたとか騒いで、権力の監視とか言いながら、すぐに政治家にスカウトされ選挙に出る。ジャニーズのような「強者」にもこびる。ジャーナリストかと思ったら大学教授になっている。そんな“鮫島的なマスコミ文化人”のなんと多いことか。

 あの戦争から78年、いつの間にやら日本には、信念もなく、理念もなく、ただその時々の強い者にすり寄っていく「鮫島的日本人」であふれかえってしまったのかもしれない。

(ノンフィクションライター 窪田順生)