水野克己・クレディセゾン社長執行役員COOPhoto:Diamond

クレジットカード大手のクレディセゾンは今年度、子会社であるセゾン投信の経営刷新やスルガ銀行との資本業務提携など、話題に事欠かない。セゾングループの将来像をどのように描き、一連のサプライズを仕掛けたのか。水野克己社長に直撃した。(ダイヤモンド編集部 片田江康男、重石岳史)

金融業界の話題をさらった
「積立王子」の退任

 事実上の更迭だ――。

 2023年5月、クレディセゾン子会社の資産運用会社、セゾン投信の中野晴啓会長CEOが6月の株主総会後に退任することが明らかになった。中野氏といえば、「積立王子」の異名の通り、長期での積立を講演などで説いてきた業界の有名人だ。

 突然の交代でクレディセゾン経営陣と中野氏の間に埋め難い溝がクローズアップされ、冒頭のように「事実上の更迭」との指摘が相次いだ。セゾン投信のファンドに投資する個人投資家の中には、中野氏の投資手法に賛同するファンも多く、中野氏退任なら解約するとの声も上がった。

 そんな中でクレディセゾンは同月、スルガ銀行との資本業務提携を発表。スルガ銀行といえば、2018年に大問題となったシェアハウス向けの不正融資問題で、金融庁から行政処分を受けた地方銀行だ。

 今年度に入って話題に事欠かないクレディセゾン。どのように将来像を描き、一連のサプライズを仕掛けたのか――。

――今年6月の株主総会で中野氏が退任し、セゾン投信の解約が進むと指摘されました。実際の影響について教えてください。

 確かに報道が出た5月頃、解約があったのは事実です。ただしあの時期は、ちょうど日経平均株価が上がってきた時期で、利確(利益確定)のお客さまもいらっしゃったと認識しています。解約の全てが中野前会長の件に起因しているのかというと、そうは言い切れません。

 実際に、足元で預かり資産総額は順調に増えています。

――顧客数の減少は。

 解約される方がいる一方で、新たに契約していただくお客さまもいますので、あまり変わっていません。

 今年4月、クレディセゾンとセゾン投信は金融商品仲介業務契約を結び、セゾンカードの会員向けにセゾン投信の投資信託を紹介するサービスを始めました。

 実はこれまで、セゾンカード会員とセゾン投信の連携の仕組みは、あまり良くなかった。ネット完結型じゃないんです。

 資料請求と口座の申し込みはできるのですが、その後の諸々の手続きが全て紙ベース。お客さまに印鑑を押して送り返してもらう作業が必要で、実際に運用をスタートするのに最長2カ月程度かかることもありました。

 SBI証券や楽天証券は、全てスマホで手続きできます。それが顧客体験のスタンダードとなっている状況で、われわれとしてはお客さまとシームレスにつながっていないことを問題視していました。来年1月から新たな仕組みを導入し、弊社のアプリとの連携がかなり向上します。

――社長交代は、そのあたりが理由なのでしょうか。

 いろいろ報道されているので、あまり隠してもしょうがないですね(笑)。