きちんと指示をしたつもりなのに思うように動いてくれない部下に、頭を悩ませている上司は多いのではないでしょうか。人材育成コンサルタントの相田吉雄氏は、『ミスやトラブルが激減する リーダーの報・連・相』(明日香出版社)の中で、「『伝えたかどうか』ではなく『伝わったかどうか』が大事。部下を批判する前に、まず上司として部下が動きやすいような指示・命令を出すことができていたかどうかをしっかりと確認する必要がある」と説きます。では一体どう指示を出せばよいのか、部下を動かすための伝え方のコツを、同書の一部を抜粋・編集して解説します。
「すべきこと」を伝えるときのコツ
当然、上司は部下に「やってもらいたいこと」「してもらわなければならないこと」があるので、それを指示しますよね。しかし、自分が新人のころなどに「上司から指示されたこの仕事って、いったい何の役に立つのだろう」と思ったことがあったのではないでしょうか。
そこで大切なことは、やるべき仕事の目的を伝えるということです。
ひと昔前であれば、仕事で上司から何かを指示された場合の返事は「はい!」しかありませんでした(実際、私もそう思っていました)。
ところが最近は、仕事の指示を出すと「その仕事にどのような意味があるのでしょうか?」「その仕事の目的は何でしょうか?」などと質問をされることが多くなってきました。
そのような質問をされると思わず「イラッ」として「つべこべ言わずに黙ってやれ!」と言いたくなった、というリーダーの話もよく聞きます。
これは「部下は黙って上司の命令に従うもの」という考え方ですね。
実をいうと私もその世代なので、そのお気持ちは大変よくわかります。しかし、残念ながらこの考え方は今の時代では通用しないのです。
仕事の指示を出すときに「目的」を伝えることは、最も大事なことです。なぜなら、目的を理解しないままで仕事をさせるということは、完成図のない「ジグソーパズル」を作らせるようなものだからです。
想像すればわかりますが、パズルのピース(作業)が全体の絵(仕事の目的やゴール)のどこの部分なのかがわからないまま作業をするのは楽しいどころか苦役になります。
私のセミナーでは、このジグソーパズルを使ったグループワークをよく行います。
グループを二つに分け、一つのグループには完成図を見てもらいながら、もう一つのグループには完成図を見せない状態でジグソーパズルを作っていただきます。
参加者の皆さんに悪戦苦闘しながらもワークに真剣に取組んでもらうのですが、当然、完成図を見ながら行ったグループの方が、
・決められた時間内に完成する
・でき上がりも完璧
という結果になります。