もちろん、仕事が楽しくて仕方なくて考え続けてしまうというならいいのですが、それでも、仕事のことを考えない「オフ」の時間をつくるほうがいいですね。自分なりのスイッチを「オフ」にする習慣をつくってみてください。
私はというと、仕事が終わったらすぐに白衣を脱いでハンガーにかけます。これがスイッチ「オフ」の合図になっていて、仕事場からは少しでも早く出るようにしています。カルテなどを、患者さんごとに、診察と診察の合間に集中して書き終えるようにしているのは、このためでもあります。眠るギリギリまで仕事のことを考えていると、交感神経が優位のまま、からだが緊張状態のままで、夢でも仕事に追いかけられて疲れもとれません。
眠る前にリラックスできる音楽を聴いたり、よい香りを嗅いだりして、少しでも仕事を忘れる時間をつくってください。
![書影『ほどよく忘れて生きていく 91歳の心療内科医の心がラクになる診察室』(サンマーク出版)](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/c/2/200/img_c25932734ffdaa04a13a1763c404f18c96442.jpg)
藤井英子 著
環境が変化するときは
からだへのストレスを気遣う
環境が変化するとき、たとえ絶好調に感じても、心身にはストレスということも。からだの変化に敏感になりましょう。
環境に変化が生じたときというのは、本人に自覚がなくても、知らず知らずのうちにストレスがかかっているものです。89歳でクリニックを開業したとき、前向きな性格の私も、プレッシャーを感じていたようで、一時、胃潰瘍になりました。すぐに病院にかかって胃カメラ検査後、薬をもらいましたが、しばらくは食欲が落ち込み、胃の痛みに苦しみました。
また、ストレスで抜け毛も増えて、やはり、心とからだは深くつながっているのだと、身をもって実感しました。新たな環境を望んでいたわけではなくても、ここ数年はコロナ禍で、環境の変化を余儀なくされた人がたくさんいますよね。
有事だからといって、「みんなが我慢しているのだから」「こういうときだから仕方がない」と、自分のつらさや不安を無視して頑張りすぎてしまうと、ある日突然、家から出られなくなったり、動けなくなったりします。実際、そうなってから、ようやく私のクリニックにやってくる方も少なくはありませんでした。
私は、お越しになった方にまず、「今日の調子はどうですか」「今日はどんなふうに感じていますか」と問いかけますが、同じことを普段の自分に声かけしてほしいと思います。小さな不調は小さなうちに解消すること。
そして、誰よりも自分が、自分のことを気遣ってほしいと思うのです。