理化学研究所が、海外2企業の量子コンピューターの導入を決めたことが分かった。米IBMと米英クオンティニュアムの量子コンピューターを調達する契約を、11月1日付で締結する。富士通と共同で国産2号機を開発したばかりの理研が海外産の量子コンピューターを調達する理由を追うと、マシンの利用者として日本の大手通信会社が名を連ねていた。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
理研が海外製の量子コンピューター2台調達へ
IBMと、三井物産提携のクオンティニュアム
理化学研究所が、量子コンピューターを“爆買い”だ。
理研の神戸事業所(兵庫県神戸市)が米IBMの超伝導型量子コンピューターを、和光事業所(埼玉県和光市)が米英クオンティニュアムのイオントラップ型量子コンピューターを調達することが分かった。随意契約で、11月1日に契約を締結する予定だ。10月10日付の官報で公示した。
理研は富士通などと量子コンピューターを開発しており、今年3月に「国産初号機」が本格稼働を開始した。このマシンをベースに、富士通主導で国産2号機を共同開発したと10月5日に発表している。いずれも超伝導型で、性能の目安となる「量子ビット」の数は64だ。
IBMの量子コンピューターは東京大学が既に導入しており、21年7月に国内初となる27量子ビットのマシンが神奈川県川崎市で本格稼働を始めた。さらに今年10月1日には心臓部のプロセッサーを127量子ビットのものに置き換えて性能を向上させた。また、東大の浅野キャンパスには、量子コンピューターに使う部品の性能などを検証するための試験設備も設置されている。
クオンティニュアムは米ハネウェルの量子コンピューター部門と英量子ベンチャー、ケンブリッジ・クオンタム・コンピューティングが21年に経営統合して誕生。22年10月には三井物産と、日本やアジアでの市場開拓などに向けた戦略的パートナーシップ契約を結んでいる。
発展途上の量子コンピューターにはさまざまな方式があり、世界で開発競争が進む。理研やIBM、米グーグルなどが取り組む超伝導型は、計算は速いものの、エラーが起きやすい、クオンティニュアムなどが採用するイオントラップ型は、量子ビットの精度は高いものの大規模化は困難などといった一長一短があるとされている。
さまざまな方式の中でも超伝導型とイオントラップ型の研究が先行しており、IBMとクオンティニュアムのマシンはそれぞれの方式でトップ級の性能を持つとみられている。
それにしても、国産2号機を開発したばかりの理研が、海外製の量子コンピューターの調達を決めた理由はなぜか。調達した量子コンピューターは、いったい何に使われるのか。調べていくと、今回の事業の当初予算は最大200億円で、ある日本の大手通信会社も参画していることが判明した。