量子レース#6Photo by Hiroyuki Oya

量子コンピューター「国産初号機」が2022年度中のデビューを目指し、開発が大詰めを迎えている。理化学研究所で進む国産初号機のプロジェクトに食い込んでいるのが富士通だ。世界と比べ「周回遅れ」とされる日本の量子コンピューターは巻き返すことができるか。特集『号砲! 量子レース』(全8回)の#6では、国産量子コンピューターの開発の舞台裏を追った。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

量子コンピューター「国産初号機」
2022年度デビューに向け開発大詰め

 埼玉県和光市の理化学研究所。東京ドーム約6個分という広大な敷地の最奥部の物質科学研究棟で今、3台の量子コンピューターの開発が進められている。

 政府が4月に策定した「量子未来社会ビジョン」で、2022年度中に国産量子コンピューターの初号機を整備することが掲げられた。国産初号機としてデビューするのがこのうちの1台。理研の中村泰信・量子コンピュータ研究センター(RQC)センター長が開発を進める超伝導方式の量子コンピューターだ。

2022年度中のデビューに向けて開発が進む量子コンピューターの国産初号機と中村泰信・量子コンピュータ研究センターセンター長2022年度中のデビューに向けて開発が進む量子コンピューターの国産初号機と中村泰信・量子コンピュータ研究センターセンター長 Photo by H.O.

 中村センター長はNECの基礎研究所に所属していた1999年、現東京理科大学教授の蔡兆申氏と共に、量子コンピューターの心臓部となる超伝導量子ビットを世界で初めて開発した。将来、量子コンピューターがノーベル賞の受賞テーマになった場合の“大本命”の一人だ。

 そして、国産初号機のお披露目に向けて開発が大詰めを迎える研究室の隣室に、富士通と理研が開発を進める量子コンピューターがある。

 富士通は21年4月、理研RQC-富士通連携センターを設立。23年度中に量子コンピューターを公開する計画で、国産量子コンピューターの民間企業一番乗りを目指す。

 次ページでは、大詰めを迎えた国産初号機の開発状況と、実機が初披露された富士通の量子コンピューター戦略について詳報する。