解散命令請求じゃない!旧統一教会と政治のズブズブを「絶縁」させる唯一の方法とは?Photo:JIJI

文部科学省が、旧統一教会に対する解散命令を東京地裁に請求した。命令が確定した場合は教団の宗教法人格が取り消される。ただし、安倍元首相の暗殺事件を機に問題視されてきた「政治と宗教」の関係が、これで解消されるかは疑問が残る。自民党をはじめとする政党と教団の関係は複雑に入り組んでいるからだ。では、この「あしき慣行」はどうすれば失われるのか。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

旧統一教会への「解散命令」で
「政治と宗教」の問題は解決するのか?

 文部科学省は10月13日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下「教団」)に対する解散命令を東京地方裁判所に請求した。

 文科省はこれまで、教団を巡る高額な献金や霊感商法の問題について、宗教法人法に基づく「質問権」の行使によって実態の把握を目指してきた。また、被害を訴える元信者らへの聞き取り調査も進めてきた。

 ここにきて解散命令を出したということは、教団に解散を請求するのに十分な証拠がそろったとみられる。そして今後は、東京地裁が解散命令の適否を司法判断する。教団側はこれに強く反発し、最高裁まで争う構えだ。解散命令の確定まで長期間を要する可能性がある。

 教団はかつて、高額な壺や印鑑を信者に売りつけて資金を集めていた。それが明るみに出て批判を浴びた後は、「勧誘」という真の目的を隠して一般市民に近づき、親しくなってから入信させる巧妙な手法に切り替えた。入信させた後で「先祖の因縁で不幸になる」などと恐怖を与え、「逃れるには多額の献金が必要」などと迫るのだ。

 こうした悪質な手法の被害者といえるのは、信者本人だけではない。安倍晋三元首相を銃撃したとして殺人罪などで起訴されている山上徹也被告など、親が教団に高額な献金をしたことで家族が崩壊し、人生を破壊された「宗教2世」の問題も引き起こしている。

 このような犯罪行為や人権侵害は厳しく罰せられるべきだ。また、教団の被害者救済は何よりも優先されるべきことだ(本連載第309回・p4)。教団への解散命令の請求は、そのための大きな一歩であろう。

 ただし解散命令が確定しても、教団の宗教法人格が取り消され、税制上の優遇措置などが失われるだけだ。「任意団体」として活動を続けることは可能である。この処分だけで、長年問題視されてきた「政治と宗教」の問題が解決するかは疑問である。

 岸田文雄首相や茂木敏充自由民主党幹事長は「自民党は教団との関係を完全に絶った」と主張しているが、それは本当なのだろうか。教団と政治の関係は複雑に入り組んでおり、簡単に切れるものではないように思える。