ドイツとフランスの「保険」の掛け方
欧州諸国の姿勢が基本的にはウクライナ支援を基調としていることは間違いない。しかし、それはウクライナ情勢の変化にいつでも対応できるようにしていることが前提だ。つまり、国益を踏まえた二股外交を展開しているのだ。
たとえば、ドイツは急速に悪化する経済状況に対応するため、実質的にロシアに対して塩を送っている。今年6月まで、ロシアから欧州に石油を運ぶドルジバパイプライン経由でロシアのエネルギーを輸入していたし、6月以降も第三国のエネルギーをロシア経由で輸入している。また、ドイツはイランとの関係が良好であり、両者の原油取引の利益はイラン製自爆ドローンに使用されていて、そのままロシアに供与されている。ドイツはウクライナ支援と同時にロシアも含む反西側国家と関係をしっかりと保っているのだ。
また、フランスのマクロン大統領は今年4月ロシアの後ろ盾である中国の習近平国家主席と面会した。その際、「ロシアに理性を取り戻させ、みんなを交渉のテーブルに着かせるにはあなたが頼りだ」と習近平氏を持ち上げて見せた。EUのフォンデアライエン欧州委員長が中国に警戒感を崩していないのに対し、マクロン大統領は「私たちが一緒にやれることは幅広い。フランスと中国の友情万歳!」と自らのSNSに中国語で投稿すらしている。フランスは中国との関係を、てことして対ロシアの“保険”をかけている。
つまり、EUの中心である独仏は、アメリカが何らかの形でウクライナから手を引くことを想定し、目立たないところで、自らの生き残りと立場の強化を図っているのだ。