そもそも志望校はどうやって決めればいいのか。わが子に向く学校とは――。特集『わが子が成長する 中高一貫校&塾』(全34回)の#10では、子どもの希望に寄り添いつつ、保護者や塾がむちゃはさせない併願戦略を組む極意について、希学園首都圏学園長の山﨑信之亮氏に聞いた。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
子どもの気持ちをなえさせずに
むちゃはさせないのが大人の役割
「目標がないと走れない」という子もいるので、志望校は早い段階でイメージを持った方がいい。小学4年生段階では、現状と偏差値が20離れている学校を志望校にしても構いません。
初志貫徹できるかどうかは別問題ですが、そこから頑張る子はたくさんいます。「あの学校に行きたい」という子どもの気持ちをなえさせずに、むちゃはさせないというのが保護者と塾の役割になります。
もちろん、6年生の11月、12月の段階で志望校を変更される方もいます。当初の志望校を貫徹する方は5割程度で、変更される方は下方修正が7割、上方修正が3割ぐらい。志望校の変更は失敗ではありません。
最終的に受験校を決めるのはご家庭ですが、「学力」「性格・校風」「将来像」「入試問題との相性」「自宅からの距離」などを総合的に考慮して、私から提案することもあります。
校風は複数の要素で考えるようにします。例えば「自由か手厚いか」という軸と、「伝統校か革新的か」という軸。「別学か共学か」「進学校か付属校か」「受験対策重視かアカデミックな授業か」という軸もあります。
子どもやご家庭によっては、「絶対に別学」という方もいれば、別学と共学を両方受ける方もいます。例えば、2月1日に開成を受ける子は男子校しか希望しない子が多いので、2日は聖光学院や栄光学園、3日は筑駒(筑波大学附属駒場)や海城、早稲田が候補になりやすい。
しかし、1日に麻布を受ける子は、男子校はもちろん、渋渋(渋谷教育学園渋谷)で女子とワイワイやるのが楽しいという子も多い。 麻布は広尾(東京都渋谷区)、渋渋は渋谷(同)にあるので、いわゆる都会的な自由を好む子も多い。
意外かもしれませんが、麻布を受ける子の中には、3日は慶應義塾中等部を受験する子もいる。一見、共通点はないですが、麻布の自由、慶應付属の大学受験に縛られない自由という意味では、ある意味一貫している。
子どもの意見を組み入れつつ1日に麻布、2日に攻玉社 、3日に慶應中等部という併願をされる家庭もあります。2日だけが、いわゆる面倒見のいい学校ですね。
これは麻布や慶應中等部に落ちたら、面倒見のいい学校で勉強して大学に進学してほしいという親の意向だと思います。子どもの意見と大人の意見をどう交ぜるかというのもポイントですね。
併願戦略を組む場合、偏差値を点で見ずに、直近数カ月の偏差値の幅で見ることが大事です。 直前期になり、親御さんのメンタルが乱れると、一番いい結果や一番悪い結果を考えがちだからです。
次ページでは実際の面談資料を公開して、併願戦略の基本を解説。学校見学の文化祭で言ってはいけないこととは?「安全校」はどう決めるのか?埼玉&千葉の学校受験で気を付けることは?さらには、子どもをリスクにさらす「ちゃぶ台返し」や「午後1教科入試の落とし穴」「第1志望校よりも上の第ゼロ志望校」など具体的なアドバイス、第2志望以下に進学した場合の大事な心得も紹介する。