ジャニーズ事務所が選んだ「廃業」は倒産と何が違う?ジャニーズ事務所は過去の不祥事(性加害問題)が要因となって廃業に向かうが、今後発生する廃業・解散・休業の要因は、「代表の死去や健康問題」によるケースが急増していく可能性が極めて高い Photo:PIXTA

10月2日に開催された(株)ジャニーズ事務所(東京都港区)の会見で、同社は今後「廃業」する意向であることが発表された。多くの人は「ジャニーズ事務所はやがてなくなる」と理解したはずだが、その実態について知る機会はないはずだ。通常、企業が事業を停止するときにイメージされるのは「倒産」。倒産は取引先に未回収金が発生したり、取引先が連鎖倒産したりするなど、悪影響が広がるために周囲から注目を浴びる。一方、廃業は原則として周囲に迷惑をかけずに事業を終えることもあり注目度は低い。だが、今後、より深刻化する経営者の高齢化によって、「廃業」はより身近な言葉となるだろう。(帝国データバンク情報統括部 阿部成伸)

「廃業」と「倒産」は
何が違うのか

 企業が事業を停止して消滅するとき、一般的には「倒産」をイメージする人が多いだろう。

 帝国データバンクが公表している月次や年次の倒産件数は、裁判所に破産、民事再生法、会社更生法、特別清算(4種類の倒産法)のいずれかを申請した企業(個人事業者含む)を対象としている(例外的に取引先などの第三者が申請してカウントされるケースもある)。

 どうして裁判所の仲介が必要なのかというと、業績悪化などで取引先への支払い、銀行への返済、従業員への給与払いや税金納付などができなくなり、法律の下で債務カットや分割払いなどを求めるためだ。倒産の92.7%(2022年)が清算型の「破産」なので、申請とほぼ同時にほとんどの企業が事業を停止して、消滅していくことになる。