2020年は急増した企業の休廃業。後ろ向きに聞こえる廃業だが、うまく活用すれば手元に資金が残る「勝ち組」入りできる。特集『廃業急増!倒産危険度ランキング2021』(全23回)の#11では、廃業手続きを支援してきた“企業のおくりびと”に、最新テクニックを伝授してもらった。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
「自分が死んだときのためにどうすれば」
“企業のおくりびと”への廃業相談が急増
「廃業や事業承継など“会社の着地”についての相談が、この2~3カ月で再び増えてきた」
こう語るのは事業承継デザイナーで司法書士の奥村聡さん。これまでに約850社の廃業や事業承継などの支援を手掛けた、プロフェッショナルの“企業のおくりびと”だ。
新型コロナウイルスの感染拡大で企業の廃業が急増している。東京商工リサーチによれば、2020年に全国で休廃業・解散した企業は、前年比14.6%増の4万9698社。2000年に調査を開始して以降、最多を記録した。
休廃業・解散した企業の代表者の年齢は70代が最も多く41.7%。この比率は前年から2.7ポイント高まっており、承継者を見つけられないまま70代を迎えてしまい、廃業を決断したケースが増加していることがうかがえる。
また、コロナ禍による事業環境の悪化で先行きを懸念し、廃業を決断するケースも増えている。
奥村さんによれば、20年春から夏にかけて相談を受けた企業の傾向としては、「積極的な廃業」が多かったそうだ。
「以前から相談を受けていた企業の経営者が、コロナ禍を契機にぱっと廃業を決断したケースもあった。また、M&Aによる事業承継を検討していたものの、コロナ禍で相手が見つからない状況が続いたため、このままでは危ないので会社を閉じた方がいいと判断した企業もある」(奥村さん)
それが、無利子・無担保で借りられるコロナ禍に伴う特別融資などが、政府の後押しもあって充実し、多くの企業は当座の資金を確保できた。こうして廃業などの決断を先延ばしにする企業が増え、奥村さんへの相談もいったんは落ち着いた。
ところが、ここ2~3カ月で状況は一変。再び廃業の相談が増え始めたという。
コロナ禍に伴う特別融資の返済を猶予する据え置き期間の多くは6カ月~1年だ。そして、昨夏の融資の返済時期が本格的に到来したのだ。
「コロナ関連の融資は、銀行はリスケ(返済計画の変更)には応じてくれるものの、“お代わり”(追加融資)はかなり厳しい。追い込まれて資金が持たないという企業がこの2~3カ月で増えている」(奥村さん)
コロナ禍直後の「積極廃業」とは異なり、「コロナの終息のめどは立たず、事業も曲がり角。ボディーブローのようにダメージが積み重なり、『もうこれ以上は無理だ。今ならコロナを理由にやめられる』と会社を畳まざるを得ないケースが目立つ」(奥村さん)といい、今後の廃業の増加を危惧する。
また、コロナ禍は経営者の思考に変化をもたらしたという。
「自分が死んだときのためにどうすればいいのか」――。
こうした相談を持ち掛ける経営者が格段に増えたそうだ。自らの“死”について考えることを極力避けてきた経営者たちが、コロナ禍で会社の“終活”に向き合うようになってきたのだ。
倒産という最悪の事態を避け、事業承継や廃業で手元資金を残す“勝ち組”入りするためにはどうすればいいのか。会社の着地を考える際に、必ず手を付けるべきことがあると奥村さんは強調する。奥村さんにテクニックを伝授してもらった。