「催眠」によって得られる「安心感」とは?
──『無意識さんの力でぐっすり眠れる本』著者の心理カウンセラー、大嶋信頼さんに質問です。この本で紹介されている「暗示」は唱えるだけで眠りに誘ってくれる「催眠効果」があるそうですが、そもそも「催眠」とはどういうものでしょうか?
大嶋信頼(以下、大嶋):催眠(現代催眠)は、「その人が本来持っている能力=無意識の力」を起動するものです。
この本で紹介している「意味がない悩みは存在しない」「夢まかせ」「無意識モード」といった暗示にも「催眠」がふくまれていおり、頭の中で唱えるだけで催眠作用が働き、自然と眠くなるしかけになっています。
この本の本文全体に催眠のしかけをちりばめているので、本を通して読んでいただくとより眠りやすくなるかもしれません。
──眠れない状態とはどんな状態なのでしょうか?
大嶋:眠れずに、嫌なことをグルグル考えてしまう状態は、駄々をこねている赤ん坊のようなもので、実は「母親の安心感」を求めているのです。
逆に言うと、安心感がないから眠れない。
催眠の効果によって、無意識が働くようになると、「どんな私でも受け入れられている」という感覚になります。
どんなに泣き叫んでいる赤ちゃんでも優しく受け入れてくれている状態なので、無限の安心感の中で眠りにつくことができるようになる、というわけです。
「無意識」はいつも私たちを助けてくれている
──寝るときには安心感が必要なのですね。そもそも「無意識の働き」というのはどういうものなのでしょうか?
大嶋:私たちは意識的にすべてコントロールしていると思いがちですが、呼吸やまばたきなど、意識しないでも無意識のうちにやっているものがほとんどです。
心臓を動かす回数なんて気にしないでも、ちゃんと無意識が状況に合わせて心拍数を変えてくれています。
呼吸についても、必要に応じて酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出して体を整えてくれる。
無意識は、私たちを知らず知らずのうちに助けてくれるものなんです。
たとえば、それまで普通に呼吸していたのに、呼吸を「意識」したとたん、どう吸えばいいか、どう吐けばいいかわからなくなって、苦しくなったことはありませんか?
それは、意識には「限界」があるので、意識すると行動に制限がかかってしまって、「こんなに呼吸が乱れていてはダメ」とダメ出しをして苦しくなってくるからなんです。
無意識には「限界がない」ので、「どんな私でも大丈夫」という気持ちになり、リラックスできるというわけです。
「今考えていることは、すべて私に活かされる」
──なるほど。だから眠れないときに「眠れない!」と強く意識してはいけないわけですね。
大嶋:まさにその通りです。眠れないときは意識を手放す。これに尽きますね。
──布団に入ってグルグル思考が止まらないとき、意識をオフするために何を考えるとよいでしょうか?
大嶋:まずは、ああでもない、こうでもない、と考えてしまう自分を責めないことが大切です。
自分を責めると眠れなくなってしまいますから。
すべて自分で解決しようと力まないこと。
考えごとが止まらないときは、暗示を唱えてみるのもいいですし、「今考えていることは、すべて無意識が私のために活かしてくれる」と思ってみるといいですよ。
「この問題を自分でなんとかしなきゃ」と思っているときと、「無意識に任せちゃおう」と思ったときの感覚のちがいをたしかめてみるとおもしろいです。
暗示は「忘れたころに効いてくる」もの
──たしかに、眠れないときは「自分でこの問題を解決しなければ!」と変な責任感が働きすぎている気がします。もし、「暗示を唱えても眠くならない!」と思ったときにはどうすればいいでしょうか?
大嶋:「暗示はいつ効くかはわからない」と思うことが意外と大切です。
意識がふっと抜けた瞬間に効いているのかもしれない。
「無意識の力は無限」です。たとえ眠くならないと思っても、その間も無意識はちゃんと働いてくれているから大丈夫です。
私も昔、催眠のお師匠さんに催眠をかけられたときに「絶対に寝るものか!」と思って反抗して起きていたことがありました。でもちゃんと起きていたつもりなのに、お師匠さんの催眠の内容をまったく覚えていない。
覚えているつもりだったのに、ところどころ抜けています。そして催眠をかけられてからしばらく経ち、「あれ? ちゃんと催眠にかかっていたかも!」と、あとから催眠の効果が出てきたことがありました。
だから、もし全然眠くならないなあ、と思っても大丈夫。忘れたころに効いてくるのが無意識のすごいところです。