自分が本当にやりたいことを
見つけるには
私たちが衛生要因を“やりたいこと”と取り違えてしまうのは、子どもの時から「○○しないと××になるよ」と教えられて、植え付けられたものかもしれません。「うがいをしないと風邪をひく」「勉強しないと将来お金に苦労する」などの教えは、しつけの一端としては大切な面もあります。ただ、同時に「○○すると△△を目指せるかもしれないよ」といったポジティブな教えも必要なのかもしれません。
私たちはどうすれば、この考え方を変えられるのでしょうか。
私が専門とするプロダクト作りにおいても、やりたいことより、やりたくないことが表に出てきやすいという傾向があります。顧客がプロダクトを使っていて苦痛に感じる「ペイン」と、顧客が望む状態である「ゲイン」とを分析して顧客のニーズを探ろうとするとき、ゲインを書こうとするとペインの裏返しになっていることがよくあるのです。
人は自分のペインとゲインもよく分かっていません。「あなたにとって何が楽しかったか」「何がつらかったか」と聞いても、潜在的なペインとゲインは明らかになりません。そこで私がユーザーにヒアリングするときには、過去を振り返ってもらいます。例えば業務用アプリケーションなら、最近その業務をやったのはいつかを尋ね、そのときあったことを初めから時系列で振り返って話してもらうのです。そして典型的なシーンで、どんな気持ちだったか、その人の感情を聞きます。すると、その人にとって真のペインやゲインが見えてくるのです。
これと似た手法に「モチベーショングラフ」「ライフラインチャート」と呼ばれるものがあります。これまでの自分の人生において起きた典型的な出来事と、その時の満足度をグラフ化して振り返るのです。私も以前これを試してみて、その後のキャリアを考える上で非常に気づきがありました。過去の感情を思い起こすことで、自分が本当は何をしたいのかが見えてくるのです。
ほかにも、日ごと・週ごと・月ごとなど定期的に楽しかったことを思い出して、どうすれば、それをもっと楽しくできるかを考えてみるというのも、真にやりたいことを探るにはよいかもしれません。