子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では、船津氏のこれまでの著書から抜粋して、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。
小学校までは、親が選択肢を与える
日本に限らず、どこで育てるか、どんな学校(公立か私立か)か、子どもを育てる環境は世界共通の悩みです。私のもとにも、受験や進路に関する悩みは非常に多く寄せられます。
まず、進路や環境選びのスタンスについて説明しておきましょう。
子どもが進学してやる気を失ったり、プレッシャーにつぶれたりするのは、多くの場合、「親の希望どおり」の進路を子どもが歩まされている───つまり、「自分で選んだわけではない」と子どもが感じながら、無理やり受験をしたり、あるいは親の期待に応えようとしたりすることで起きています。
親の理想や、見栄、あるいは安心感といった親の都合で子どもの自主性を無視した結果、優秀な才能を持っていた子どもがつぶれていったという例がいくつもあるのです。
つまり、子どもの進路を考える際にもっとも重要なのは、「自主性を尊重すること」です。
しかしながら、一方でこんな問題が出てきます。
たとえば幼稚園を決める時、「子どもの意見を尊重します!」「子どもの感性を信じます!」という親がいますが、知識も経験も少なく、自分の強みや得意分野を理解していない3歳の子どもに「賢い選択」ができるでしょうか。
それは、地図の読み方を知らない子どもを、目的地も教えずに大海に送り出すようなものです。
子どもによりよい人生を送ってもらうためには、自分で判断ができない年齢の時には、親が道筋を示さねばなりません。
自主性を尊重しながらも、子どもに賢い選択をさせなければいけない。どうすればよいでしょうか?
私は、小学校時代までの教育(習い事も含めて)の決定権は、親が持つべきだと考えています。
自主性の話と矛盾するようですが、重要なポイントは以下の3つです。
1. 親が一方的に決めないこと
2. 子どもの興味や強みにきちんと合っていること
3. いくつかの選択肢の中から、子ども自身に選ばせること
特に3つ目の「いくつかの選択肢の中から、子ども自身に選ばせること」が最も重要なポイントで、これをもっと言うと、「自分で選んでいる」と子どもに思わせるように導くテクニックなのです。
実際、賢い親たちはいくつかの選択肢を提示した中から、子どもに対して、「自分で決めていいよ」と選択権を与えているのです。
たとえば、AとBという雰囲気の異なる幼稚園があるとします。親から見て、子どもの性格に合っている幼稚園がA、明らかに不適応な幼稚園がBだとしましょう。
この時、子どもに有無を言わさずに「Aに通わせる」と決めるのではなく、子どもとAとBの幼稚園に一緒に訪れます。
その上で、「どっちに通いたい?」と選択をさせるのです。幼い子どもであっても実際に幼稚園を訪れれば、どちらが楽しそうなのかすぐにわかります。
賢い親は、一方的に決定事項を伝えるのではなく、万事において子どもに選択をさせていくのです。
その幼稚園や学校に通いたいかどうかを子どもが自分で選ぶことで、「自主性を持って行動している」という気持ちが生まれます。
自分で選ぶことの積み重ねが、本人のやる気となって、積極的に物事にチャレンジしたり、困難にへこたれないタフネスを獲得していきます。
子どもはどんなことを好きなのか、どんな環境が向いているのか、親ならわかるはずです。
子どもの特性・強みに合いそうな幼稚園を探してきて、子どもが楽しめることを確認した上で幼稚園見学に参加させるのです。そして、「あなたが決めていいよ」と選択肢を与えることで、子どもは自分の意思で「ここに行きたい!」と言うわけです。
中学受験などの場合も同じで、一方的に親が決めるのではなく、子どもがその中学に通いたいと思わせる「仕組み作り」が大切です。
その学校の文化祭やイベントに参加してみたり、在校生や卒業生と話をする機会を作ったりして、上手に子どもの興味を引き出すといいでしょう。
(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)