定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる!マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されました。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

ねんきん定期便の「老齢年金見込み額」をアテにして早期退職してはいけない!Photo: Adobe Stock

「ねんきん定期便」でわかること

 毎年誕生月になると「ねんきん定期便」のはがきが送られてきます。35歳、45歳、59歳の時には、全期間の納付情報が書かれたA4の封書が送られてきます。
 はがきの「ねんきん定期便」に記載されているのは、「直近1年間の保険料の納付状況」「これまでの保険料納付額」「これまでの年金加入期間」「老齢年金の見込み額」など。

「ねんきん定期便」は、見方がわかりにくいし、面倒でチェックしていない方も多いとは思いますが、これが送られるようになったのは、年金記録の「モレ」や「誤り」が大量に見つかり「消えた年金」として大きな問題になったからです。本書では実物を示して、見方を提示しています。
 将来もらえるはずの年金が消えていたら大変です! まずは「直近1年間の保険料の納付状況」、「これまでの年金の加入期間」などにモレや誤りがないかを確認してください。
 特に、転職をしている人や結婚で名前が変わった人などは、記録が抜けている場合があります。モレや誤りがあったら、最寄りの年金事務所または年金相談センターに問い合わせましょう。

老齢年金の見込み額とは

「ねんきん定期便」の各項目の中でも、皆さんが最も気になるのはもらえる年金の見込み額でしょう。
 ただし、この見込み額を見る時には注意ポイントがあります。これは、今の状況が60歳まで続いたと仮定して計算された見込み額です。

 役職定年や転職、あるいは早期退職などで給与が下がると、実際もらえる年金は減ることになります。

 たとえば、知り合いのAさん(55歳)は、2年前に勤めていた会社を退職しました。
 迷いもあったそうですが、背中を押したのは、早期退職するかどうか悩んでいた時に送られて来たねんきん定期便だったといいます。

 40代後半で部長職についたAさんは、高い給与をもらっていたため、ねんきん定期便に記されている年金見込額が予想外に多かったそう。貯金もあるし、これだけの年金があるなら老後の資金に不安はないと判断し、早期退職。地元に戻り趣味に生きることにしました。

 ところが、退職後送られてきたねんきん定期便に記された年金予想額は、退職前に見たものに比べて明らかに少なくなっていました。Aさんが年金事務所に問い合わせをすると、「この見込み額は、60歳未満の方は現在の年金加入制度に60歳まで継続して加入したと仮定して、65歳から受け取れる年金見込額を表示します」との回答。会社を退職して、ほぼ無収入となり、国民年金になったAさんの年金見込額が、勤めていた当時より少ないのは仕方がないことだと言われてしまったそう。

 つまり、今後給与が減る可能性のある人は、この見込み金額をあてにして、老後の資金計画を立てたり、早期退職をしないほうが無難です。

 いつでも使える「ねんきんネット」が便利

 いつでも年金情報を確認したいという人は、「ねんきんネット」を利用してみましょう。
 ねんきん定期便に記載されている「④ねんきんネットへのアクセスキー(有効期間到着後3か月)」があれば、すぐに登録できます。アクセスキーがなくても、ウェブサイトの申し込み画面に基礎年金番号などを入力すると登録に必要なユーザーIDが郵送で届きます。

*本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋し新原稿を加えて編集したものです。