「メモ=情報を忘れないために書くもの」と思ってはいないだろうか? 実はメモは、「考えること」を助ける強力な武器にもなる。そのノウハウが紹介されているのが『考える人のメモの技術』。著者の下地寛也氏は日本で一番ノートを売る会社・コクヨに長年勤務し、書くことに真摯に向き合ってきた。本書にはそんな下地氏が、一流のビジネスパーソン・クリエイターたちのメモを収集・分析し、発見した「書くこと」を通して「自分なりの答え」を出す方法が紹介されている。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「メモの技術」とは何かについて紹介していく。(構成:長沼良和)
気分でメモをとっていないか?
「たくさんの情報があるから、メモをとって整理整頓しよう」
「今日のセミナーではたくさんメモをとろう」
「メモ帳を新しくしたからこれからしっかり書いていこう」
このように、その日の気分でメモをとっている人はいないだろうか?
気分次第のメモでは、その時々で内容にムラが出てくる。
これでは、メモを十分に活用しているとは言えないだろう。
良いインプットができなければ、当然良いアウトプットもできない。
「メモの基準」で情報収集の精度を上げる
インプットのツールとしてメモをとるにはコツがある。
それは「メモの基準」を持っておくことだ。
メモの基準を自分の中に持っておくと、必要な情報が無意識でも目に留まりやすくなる効果があるという。
人の脳は特定のなにかにアンテナを立てると、それに関する情報に敏感になりやすい。この能力をしっかり活用していこう。
メモをとる場合には、この効果を利用することで、情報収集の精度を高めることができる。
「メモの基準」は良いアウトプットをするために設ける
メモの基準を作るには、「良いアウトプットをするために知っておくべきことはなんだろう?」と考えることが重要だ。
そのためにも、メモするノートの最初のページに、どのようなことをメモしたいのかリストアップしておくことをおすすめしたい。
これによって関係する情報があったときに、「これはメモしておこう」とピンとくるはずである。
ただし、メモの基準にしばられすぎる必要はない。
基準にあったものしかメモしないと決めたら、逆に書くことがほとんどなくなってしまうかもしれない。
気軽に「これはメモっておこう」と思ったことを記していく形で良いだろう。
「活用したい情報」と「面白いと感じる情報」
では、メモの基準をどのように置けば良いのか紹介しよう。
大きく分けると「活用したい情報」と「面白いと感じる情報」の2つがある。
「面白いと感じる情報」とは、すぐに使えないかもしれないけど、自分の感性や嗜好性に合っているなと感じる情報。
感動したり、ワクワクしたり、刺激を受けるような情報です。単に、使えそうな情報だけを集めるのではなく、感性に働きかける情報をメモすることが自分らしさを磨く上で大切になります。(P.84)
専門性の深さと一般常識・教養をバランス良く吸収する
著者の下地氏は、自分らしい発想や行動をするためには、「T型人材」になる必要があると推奨している。
自分の専門性という「タテの棒」を深めるためのメモではスペシャリストにはなれるが、他の分野はまったくわからない視野の狭い人材になってしまう。
一方、一般常識や教養という「ヨコの棒」ばかりメモしていては、雑学ばかり幅広く知ってしまい、思考の根拠がない人になってしまうかもしれない。
両者のバランスが大切なのである。
アウトプットするための「視点」を持つ
バランス良くアウトプットができるようになるためには、以下のような視点を持つといい。
・直接的には仕事に関係ないことでも、興味の幅を広げることにつながる「面白いと感じる情報(ヨコの棒)」の視点(P.85)
これらの視点を常に意識することで、メモの基準が明確になっていくのである。